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欲望

慕っている点では同じ? 何だよね?

  第251話  欲望

 全ての人間の真名。

 それを全部覚えるなど不可能だろう。


 そう判断して、自分は司祭の動きを観察していた。

 真緒様に対する不敬も許せないが、それでも自分は冷静の動こうとしていた。


 それ故。

「勇者」

 勇者の名を呼ぶと司祭に向かって直接攻撃を仕掛けたのだ。


「……」

 こいつの目には自分は映ってないだろう。


 真緒様以外を目に焼き付けたくない。

 そんな態度。


 気持ちは分かりたくないが分かってしまう。

 こいつはある意味自分に――魔族と言う種そのものだ。


 欲望で強くなる魔族。

 その中でも魔人になる魔族の欲望は似通っている。


 魔王の傍に居たい。

 我が君の目に触れたい。


 その欲望が強いから魔人になる。


 自分もそうだった。


 我が君に拾われて傍に居させてもらったアカネ。

 この世界に戻られて最初に作られたクー。


 自分はその二人と大きく異なり、出会った時は大勢の魔族がそこに居て、たまたま自分が意見を告げたから名を覚えられた。

 ――ただ、それだけだ。


 司祭。

 そう名乗る魔王候補の身体はその時その時で形状を変える。

 だが、よく見ていると形状が変わっても、自らの服は必ず触れている。


 ――人間の頃の習慣だろうか。

 人は服を気にしてるが――ちなみに魔人三人も魔力で紡いだ服を纏っている――それとは少し異なる感じがしたのだ。


 司祭と言う立場。いつでも捨てていいと言っているがそれにしては、宗教色強いその服を気にしている。


(もしかして……)

 だから試した。

 だから、行動に移した。


 接近戦――本来なら敵わないほどの実力に開きがあるのだが、司祭は忌々しい事に真緒様しか見ていない。


(それにしても……)

 不思議な存在だ。


 魔族と言うのは欲望で強くなる。

 司祭の欲は我が君――真緒様の関しての欲望。

 だからこそ腑に落ちない。


(真緒様にこだわるのにどうして魔王になる程の欲望を出せた?) 

 強くなりたいというのは魔族の望みの一つだが、魔王に認められたい。魔王の傍に居たい。そう言う望みは魔王に次ぐ二番手になるものであって上回るとは思えない。


 勇者の欲は分かる。

 英雄になりたい。

 その英雄と言う道は魔王を上回ってこその欲望であるから。


 もう一人の魔王候補も分かる。

 人と魔族の共存。

 今までの方法ではそれが実現しないから新たな方法を探すのには今の状態から大きく変化さえないといけない。

 それは、我が君を否定するという事で能力は上回る。


 だけど、よく分からない。

 真緒様にこだわっているのにどうしてこいつは魔王になれる?


 攻撃を仕掛けて、相手の動きを見る。


 相変わらず、その目は真緒様しか見ていない。

 だけど……。


「――真緒様の本質を歪めて、それで真緒様を慕うか……」

「なにっ?」

 ぴくっ

 司祭が反応する。


「――事実だろう」

 真緒様はいろんなものを愛している。その慈悲深さで苦労をするが、それでもそれがこの方の魅力だ。

それを歪めてまで欲するのは――。


「真に真緒様を慕うとは言えないのではないか」

 そう告げると、司祭がようやくこちらを見る。


「ただが、獣人上がりの魔人が」

 舐めた口を聞きよって。

 迫る攻撃。

 それを躱して司祭の服を掴む。


「勇者!!」

 叫んでその服を司祭から無理やり剥がして勇者に向かって投げる。


 そこから感じる力の流れ。


 勇者の剣が動く。

 服を切り裂くと縛っていた束縛が緩んだのか魂達に変化が起こる。 


「リジー!!」

 勇者が叫ぶのに答えるように巫女が神の力を使用する。


 魂の開放。


 それを見届けようと目を向けたその時――。


「邪魔者が」

 司祭の身体が巨大な槍の様に変貌して体を貫いた。

 


………。

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