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こいつの変態具合は書いてるとはっちゃける

  第250話  魂

「なんで、そんなに……」

 信じられないと呟いたのは誰だろう。


 王女かそれとも巫女だろうか。


 まあ、女性の声だったから勇者じゃないのは分かるけど。


「驚きましたか? 我が君」

 あくまで外野など目に入ってないとばかりにこちらだけを見て告げてくる。

 そいつのその態度に気持ち悪いと思ってしまう。


「ああ。我が君と呼ぶのを止めるように言われていましたね。すみません。――真緒様」

 ぞくっ

 かつてここまで名前を呼ばれて嫌悪感を抱いた事などあっただろうか。

 

 リムクラインが怒りで再び攻撃しようと構えているが、

「リム」

 相手の挑発だ。乗るな。

 そう声を掛けて怒りを抑えてもらう。


 炎が取り敢えず沈静化したので床に着陸すると――魔法少女がやっと解放されたと呟いていた――勇者が剣を構えて、何時でも攻撃できるようにしている。


「冥王。どうにかならないのか⁉」

 女騎士は二頭身の可愛くデフォルメされた人形姿の冥王に声を掛ける。

「――したいのはやまやまだけど、真名が握られてるから、僕感覚では、あれらは『生存者』になるんだ」

 生きている者じゃ冥界の門は開けない。


「明らかに生きてないのにかっ!!」

「……生者と言う基準は《死》という概念だけじゃ言い表せないよ。死んでいるのに人が化けて出るかもという感覚が死者を冥府の門に向かわせないというのもあるからね」

 恨んでいる者が地縛霊になるという話は実はそう言う生者の思い込みが束縛しているんだよ。


「――流石死の管理人」

「おやっ、僕の言葉は届いてるんだね。てっきりラーシェルの声しか聞こえてないのかと思ったよ」

 司祭と冥王がのほほんと話をしているが、

(ハゼット……。不機嫌だな)

 表に出すような事はしないが、空気が――それでも付き合いが長いから分かる事――刺々しい。


「当然ですよ。――真緒様の友には優しいつもりですよ」

「ふうん。――てっきり独占欲が強くて友人も認めないと思ったよ」

「――無論認めてません」

 くすっ

     ・

「ですが、今のワタシでは冥王と精霊王。龍帝を相手に勝てるとは思えませんので」

「ふうん。『今の』と付けるという事はいつかは勝つつもりなんだ」

 冥王が面白そうに――それでも不快感を抱きつつ――尋ねる。


 ………どうでもいいが。縫いぐるみ姿で話をしているとホラーなんだが。(現実逃避中)


「そんなにどうやって……」

 勇者が尋ねる。

 あっ、無視してる。

「……」

 そこで尋ねてくれという視線を送らないで欲しい。勇者一人ならともかく巫女もこちらを見て来るな。


「それは…私も聞きたい……」

 気にはなるが話したくない。


「ああ。真緒様。――分かりました」

 その感極まった表情を止めてくれ!!

 って、リム気持ちは分かるけど、殺気を抑えなさい。挑発にしかならないから。


 ……疲れた。

「ありゅじ」

「……」

 ああ。アカネとクーがこちらに寄ってくる。ああ、癒される。

 つい、なでなでとその柔らかな髪の毛とか耳とか尻尾とかを堪能してしまう。


 って、そこで羨ましそうにこちらを見てるリムクラインと――視線に入れたくないが――司祭の姿がある。


 リムはともかくお前が羨ましがるな。原因はお前だろう。

 さっさと説明しろよ……。


「神殿と言うのは都合のいい場所でしてね。出産。結婚。死亡……他にも多くありますが、それらの届けは全て神の名のもと神殿に届けられるんですよ。真名と共に」

 司祭は笑う。人を馬鹿にするように。


「それを通してワタシは魂を集められるんですよ。そう、ワタシが司祭としている年月分の」

 それは……!!


「ええ。お判りでしょう。――この魂らはワタシが殺した物を含め、この地域で死んだ者すべての魂なんですよ」

 まあ、使い過ぎて魂が弱ったのは冥界に送ってますけどね。


 そう誇らしげに告げるそいつに。

「外道が…っ!!」

「道を踏み外した? 違いますよ。望みを得るための道がたまたまこちらだっただけですよ」

 にこやかに誇らしげに告げる司祭に、


「――言いたい事はそれだけか」

 冷静な声。


「リム……」

「真緒様の事を慕っていながらも青様の望みと真逆な行いをする。――そう言う輩は真緒様の記憶に留める必要がない」

 静かな怒り。


 そして、

「――勇者」

「んっ? なっ、何だ⁉」

 声を掛けられると思ってなかった。そんな反応をする勇者に向かって、

「――後は頼む」

 そう告げた――。

どうして変態って、その人が好きな癖にその人が嫌がる事ばかりするのかな……

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