殺意の支配する空間
偶然だけど、リムを山羊にして正解だと思った。(どこぞの聖闘士の影響で山羊にしたんだけど。本家とロストキャンパス。どちらの山羊座も好きです)
第249話 殺意の支配する空間
炎の熱が熱いなと思いつつ、焼き尽くされる司祭の玩具にされた人々がこれで解放されるかと思って安堵する。
「リムクライン。お疲れ様」
「――いえ。まだです」
リムにねぎらいの言葉を掛けたらリム本人に否定される。
「我が君がお気に召さなかったんですね」
残念です。
炎の中無傷で立っている司祭に――まあ、魔力の質とか強さからすればリムクラインよりも強いから仕方ないが――イラっとしながら。
「――当然だ。あと、我が君いうな!!」
我が君呼びしていいのはもふもふな魔族と私の意思に従う部下だけだ。お前みたいな変態部下にした覚えがない。
「そうですか。なら、――真緒様」
殺気がその場を支配した。
私ではない。
それは――。
「真緒様の名を軽々しく呼ぶな!!」
怒りで顔を歪めているそれは、あちらの世界の西洋の悪魔を彷彿させる。
悪魔の羽根とかそう言うのはないけど、山羊の角を持っているというのが良くある悪魔のイメージ――しかも美形でその美しさで女の人を誑かすところもそのまんまだ――が、一瞬だけ、その場を支配する程の殺気を放って。
――司祭の力を削ぎ落とそうとする。
「地獄絵図……」
勇者が呟く。
全てを焼き尽くす炎。
西洋の悪魔。
そして、神に仕える――見た目だけ――徳ある司祭。
「宗教画でこういうのがありそうだな」
そう言われて見ればそうだな。
「リムがここまで怒るなんて……」
「それだけ、新庄さんを大切に思っているんだろう」
勇者が告げる。
「……」
大切にされているのは分かっているが、
「あいつはリムより強い」
認めたくないが、
「リムが危険だ」
無傷で済むとは誰も思ってないが、リムに無理をしてもらいたくない。
「……」
勇者。何その意味深な顔?
「……男にはかっこつけたい時もあるんだよ」
………。
「中二病が何言ってんの?」
「中二病って言わないで、頼むから……。うん。頼むから……」
あっ、傷抉っちゃった(笑)。
「せめて、私の魔力が戻っていれば……」
「支援するっていうの?」
あっ、勇者。回復した。
「――止めた方がいいよ」
「なんで?」
その方が勝率が上がるのに。
「新庄さん。男のプライドってあるからね」
その後と何かぶつぶつ言っていたけど、聞き取れなかった。
「だけど……」
なおも言いつのろうとするが、
「勇者」
巫女が口を開く。
女騎士も険しい顔。
……魔法少女が疲労で苦しそうになっているな。
そういや、まだ宙に浮かんでいた。火が弱まらないもんな。リム頑張り過ぎだ。
「司祭を見て下さい」
巫女の言葉。
そして、女騎士の殺気。
「……性質悪いな」
「どうしたの?」
司祭を正視したくないから見ないようにしていたけど、何かあった?
「見てみる?」
不愉快になるよ。
勇者の言葉にどういう事だと視線をやり。
「……………………確かに」
司祭の後ろ。そこには大量の魂。
「おや、驚きましたか?」
司祭は誇らしげに、
「神殿を切れなかったのはこれがあるからですよ」
それは、おそらく、この街の住民全ての魂。
「真名は便利でしょう。彼の女神でやり方を覚えましたから。死んだら魂は全て真名を握ったワタシの僕になるんですよ」
その言葉に、
「――許せないな」
勇者達の怒りも殺意となってこの場を支配した。
冥王「道理で冥界に来る魂が少ないわけだ……」




