勇者の戦い
ハートフルボッコ。だよっ♡
第247話 勇者の戦い
ラスボスがっているという感じの重厚な扉――。
「ここか……」
勇者が告げると頷く勇者ハーレム――もとい勇者一行。
ばんっ
勢いよく扉を開き、
「ここだな。司祭!! この勇者が正義の力を持って」
「ちょっとまてぇぇぇぇぇ!!」
叫んだ私は悪くない。
「前回(魔王だった頃)も思ったけど、何その妙な台詞。前世の自分はその手の知識がなかったから突っ込めなかったけど、今なら言える!!」
びしっ
指差して、
「どこのゲームの主人公だ。舞台俳優だ!! 中二病にしか思えない芝居掛かった言い方。真剣に戦う気が合ったの⁉」
そう、今なら言える。
ずっと、突っ込みたかったのだ。
ぱちぱちぱち
どこからか拍手がする。
って、どこからじゃない。勇者の仲間達からの拍手。
「ダサいと思っていたんだ」
「勇者によると勇者の力を集めやすい言葉だとの事でしたけど」
「正直。あれはないと思ったんだよね~」
………仲間からもフルボッコ。
「……言ってみたかったんだよ」
それであのセリフ。
「ださっ」
本音を言うと勇者が落ち込んでしゃがみ込んでいる。
あっ、『の』の字書いてる。
「あの…」
王女が心配そうに声を掛けてる。
「いいんだ。いいんだ。勇者と煽てられて立ったのに倒しちゃいけない魔王を倒したとか、自分が魔王に成り掛けたとか。色々してるんだ。今さら黒歴史の一つや二つ…………」
何言ってんだこいつ。
「真緒様……」
「虐めすぎたかな」
「いえ、こういう時は『いいぞ。もっとやれ』というのではないでしょうか?」
おいっ、誰だよ。真面目なリムにそんな冗談教えたの!!
って、まあ一人――冥王――しかいないだろうけど。
「失礼な。教えてないよ」
嘘だっ!!
「ただ、よくこの世界に来る勇者達のバイブル(ラノベ)を見せているだけだよ」
………。
「えっと……」
「異世界召喚勇者って多いんだよね」
聞きたくなかった。
「勇者のバイブル(ラノベ)は英雄譚に欠かせないから翻訳されてるからね。結界作って引き篭もっていたラーシェルは読んだ事無いだろうけど」
引き篭もりって間違ってないけど、うん。その言い方はやめて。
………悪い事した気分になるから。
『わらわも読んだ事あったが、そうかそう言う参考資料があったのじゃな』
わらわを倒しに来る勇者もそれを参考にするのかそれは面白そうじゃな。
……精霊王。そこで面白がらないでくれないかな。
「僕はそれを使われたら独創性が無いと告げてやり直しさせるな」
……冥王の対の勇者に同情します。
まだ勇者は『の』の字を書いてる。
だけど、そろそろ帰ってきてもらわないといけないようだ。
「――独創的な飾りだな」
嫌味である。
「喜んでもらえてよかったです」
司祭のいる部屋。
かつて王が居た空間は血と肉で汚れた醜悪な世界が広がっていた。
いや、その突っ込みをしたくてわざと臭いセリフを勇者に言わせましたけど、勇者いじめがぬるかったかな。




