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ある狂信者の準備

残虐シーンあり

  第246話  ある狂信者の準備

 話は少し前に遡る。


 彼は全てを手に入れた。


 愛する王を独り占めする空間も。

 愛する王に釣り合えある力も。

 

 後は、愛する王に自分だけを見てもらえるようにするだけだった。


 そのために人質を用意して捕らえた。

 そのために洗脳を開始していた。


 全ては自分の思い通りになっていた。

 だが、


 勇者というもう自分にとってどうでもいい存在の消滅という報告で愛する王から引き離された。


 ――それが不幸の始まり。


 自分達の利益しか口にしないもののせいで愛する王の元に帰れない時間だけが過ぎていく。


 何度こんな茶番を壊そうと思ったか。

 もうすべてが手に入ったから壊しても構わないだろうと自問自答をして、それでもまだ利用価値があるかもしれないと耐えていたのに。


 愛する愛する王が自分の用意した世界から消えたのを感知したのだ。


 馬鹿らしくなった。

 こんな茶番に付き合っていたから大切な王が攫われた――彼には抜け出したという認識はない――この者らの足止めでせっかくの王が消えてしまった。


 小者は小者らしく利用されるのを待っていればいいものを。


「しっ、司祭…⁉」

 慌てるがもう遅い。

 

 自分達の非に気付いたのなら責任を取ってもらわないと――。


 そう。そして今――。


「ああ。我が君」

 べちゃっ

 楽しい楽しい粘土遊び。

 べちゃべちゃ


 粘土から助けてくれとか殺してくれという声がするが、そんなものを気にせずに楽しく作り上げていく。


「我が君は綺麗なモノが好き……」

 なら、我が君の為に綺麗に綺麗に飾ろう。


 壁の模様替え。

 赤と黒。


 他の色もあったが、気が付くと茶色に染まっている。

「喜ぶといい」

 壁に塗り固められた粘土――それがかつてこの国の王であったその者の顔だと気付いた者は悲鳴をあげるだろう。


 司祭の使う粘土は生きている人間。ぐちゃぐちゃに煉って、形を作っていくが死ねず。痛覚などの感覚を敢えて残され続けている。


 苦痛が終わる事も無く、気が狂う事も死ぬ事も許されない。


 それをなしている司祭はどう固化校閲した笑みを浮かべ、

「――嬉しいでしょう?」

 王の顔を撫でる。撫でられるたびに痛みが襲い顔を歪める。


「――我が君を楽しませる飾りに成れたのだから」

 苦悶の表情を浮かべるそれに、

「綺麗ではないな」

 ぐちゃっ

 一度それを潰して笑顔の飾りに作り替える。

「喜ばしい顔こそ我が君が喜ぶもんであって、醜い顔は困ります」

 ぐちゃぐちゃ


「――これでいい」

 満足の出来る笑顔になって司祭の顔も綻ぶ。


 その造りかえられた顔を持つ飾りの悲鳴などお構いなしだ。

「――さあ、歓迎しましょう」

 我が君と自分の仲を邪魔したのだ。再会の為に協力してもらうのは筋だ。


「喜びなさい。お前達などに我が君を見せるのも勿体無いが、我が君は慈悲深い方。特別に生かしてあげましょう」

 いっそ殺してくれと思っているのに気付きつつ、司祭は冷酷に告げる。


 王を招く空間に飾られたたくさんのオブジェを見て満足げに笑い。司祭はドアが開かれるのを待つのだった。




壁のオブジェ(?)はよくある。鹿の顔が飾られているあれを思い浮かべて下さい

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