最後のステージへ
と言いつつ最後は遠いんだろうな……
第245話 最後のステージへ
殺気が自分に向けられているわけではない。
(それは、分かっているけど…)
それほど三人の殺気は鋭かった。
主である自分をドン引かせる程……。
「新庄さん…」
何とかならない?
勇者が若干怯えた様に――勇者だろう。一介の魔人の殺気に充てられて涙目になるなよ――尋ねてくるが、
「うん。無理」
諦めて。
正直、魔力もないかつての魔王にここまで忠義を抱かなくていいのに三人の忠義はこちらが戸惑うぐらい強い。
「――おお。怖い怖い」
司祭が本当に怖がっているのか不思議な声で、
「では、怖い方が居るのでここはお別れしましょう。また後程」
声は消える。
「――リムクライン。アカネ。クー」
いまだに殺気を撒き散らしている三人に声を掛ける。
「その殺気を抑えなさい」
「でも、ありゅじ…」
「私の危機が来る時に疲れるだろう」
そのまま殺気を撒き散らしていたら。
そう告げると三人はあっさり殺気を抑える。
この変わり身の早さについ感心してしまうと――その傍の勇者達はかなり引いているが見なかった事にしよう――。
「ところで……」
「うん?」
「ここからどう行くの?」
城の事はあまり詳しくない――魔族が捕らわれていた牢屋は詳しいけど――勇者達に付いて来ただけだからここからどう行くのか決めてない。
「上に、玉座に向かおうと思うんだ」
玉座。
「神殿じゃなくて?」
確認すると、
「玉座でいいよ。――だって、相手はもう神に仕えているという仮面剝がしているんだし」
勇者が告げる。
「それに…」
「それに…?」
何?
勇者が迷うように、
「あいつはここまでの事をしているんだ」
紅い血のスライム。人を繋ぎ合わせた化け物。
「本命は玉座においてある」
本命……。
王女が青白い顔で今にも倒れそうにしている。
「そう、本命」
勇者の顔は静かだ。だけど、内に秘めた怒りを感じる。
「今回の勇者召喚の立役者と共に居るよ」
立役者………。
その言葉の意味に気付いてとっさに王女を見る。
「………覚悟の上です」
気丈な王女の言葉にミニマム精霊王が慰めるように撫でる。
「そうか」
最初に会った時は我儘姫だったのに大分変ったものだ。
(まあ、魂の輝きが興味深かったからな)
原石が磨かれて輝きだしたか。
「こちらだ」
女騎士の声に付いていく。
来るのを楽しみにしている存在が居るのをあえて気づかない振りをした。
気が付いたら勇者のハーレムに居る王女。




