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スライム撃破

スライムはしょぼくありません

  第243話  スライム撃破

 司祭は笑う。

 いや、笑っている声が響く。

「我が君のお好みがそんな優男や小娘やガキであるのなら、わたしが用意しましょう」

 にこやかにそれでいて不気味に笑う。

「動物もお好きなら動物もたくさん用意しましょう」

 貴方のために。


「ですが、我が君。貴方が心を向けるのはわたしだけでいいんですよ」

 紅いスライムが近付いて結界を壊そうとしている。 

「そこの魔族も勇者も世界も貴方にはふさわしくない。貴方の愛を理解しなかった人間にもふさわしくない。――わたしだけでいいんですよ」

 結界に赤いスライムが乗ってくる。重みで負荷がかかり、見えないはずの結界がスライムを通して形が分かる。


『――よく言う』

 冥王の声がしたと思ったら女騎士の鎧からひょこひょことぬいぐるみが出てきて、

『ラーシェルから人を奪ったのは君だろう』

 糾弾する。

 冥王はぬいぐるみ姿だからどんな表情をしているか不明だが、こいつの事だから、にこにこ笑いつつも目は笑ってない状態なんだろうなと想像できる。


「巫女」

 ふと。ある事を思いついて、巫女を呼ぶ。

 上手くいけば御の字だ。


 巫女にそれを伝えると巫女は少し考え込み。

「……面白そうですね」

 やってみましょう。

 告げて結界を強化する。


『結界を強化ですか。それは必要ですね』

 そうやって我が君の仲を阻むのは不快ですが。

 司祭の言葉に答えず、巫女は神から貰った力を振るう。


 結界に触れていたスライムが溶け出す。


「新庄さん…何をさせたの?」

「車の結露って分かる? 後ろの窓に黒い線が付けてある車があったけど、それの要領」

 線が熱は持って結露を消していった。

「そんな感じで結界の中に浄化の力を流してもらったんだ」

 触れている所から溶ける。


 それから逃げればいいのに、このスライムは司祭の最小限の命令しか受けてないのだろう。

 即ち――。


「私を捕らえろという命令だけだから出来たんだろうね」

 自分と言う個を大事にしろと作られていたら危機を察して距離を置いたのに、そのスライムは無かった。

 スライムは溶けていくが暴れて抵抗する事も逃げる事も無く溶けて消えていく。


 べっちゃり


 血が床に広がっている。

「………」

 何人分だろう。

 一人や二人の血を全部使ってもここまでにはならない。多くの者の血が使われたのだろう。


「――行こう」

 勇者の声がする。

「これだけじゃないから」

 新しい魔族として歪められた人間は。

「そうだね」

 ショックを受けている場合じゃないか。


 それにしても……。

「冥王? ここで出てくると思わなかったけど」

 ぬいぐるみを渡していたけど。そんな簡単にぬいぐるみと言う媒介を通して声掛けてくるとは思わなかった。

『出るつもりはなかったよ。ただ、死体で遊ぶにしてもお粗末だから不快に思っただけ』

 冥王の矜持らしい。


『遊ぶならもっと楽しくさせないと』

「――それ勇者に言わない方がいいよ」

 この正義馬鹿が退治しに来ると思うけど。

 そう忠告すると。

『――そのための加護だから』

 加護をあげたから逆らえないよ。少なくとも女騎士は。

 そう楽しげに告げる冥王――ぬいぐるみに――、

「それを堂々と言っちゃうんだね」

 勇者が困ったように口を開く。


 そう言えば……。勇者居たな。

『フフッ』

 ああ。こいつ。ワザと挑発したな。

 冥王の言葉遊びに振る舞わされたのに気付いて、盛大にため息を吐いた。

結界にくっ付いているスライムって色が違えばナメクジかカタツムリみたいなものだと思う

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