戦いに
そして、ようやく戦場に行きます
第229話 戦いに
「………」
しゅるるるっ
服を整える。
しゅっ
ベルトを付ける。
かちゃっ
剣を下げる。
鏡で確認する。
「うん」
おかしい所はない。
人々が憧れる《勇者》の完成だ。
「――行こうか」
声を掛けると女騎士。巫女。魔法少女が姿を現す。
――共に魔王を倒した信頼できる仲間。
「準備できた?」
転移をするために新庄が装置を動かしている。
「ありがとう。新庄さん」
魔王城の事は新庄が一番よく知っている――最も新庄からすれば玉座にずっといたから城は詳しくないとの事だが――頼りになる。
「殿下は……」
精霊王は一応いるがミニチュア――ちなみに少年姿――今までは精霊王が居るから無茶できたけど今は無理だろう。
結界の影響で本体はここには無く一部しか力を使えない。
「……わたくしは行きます」
きっぱりとした声。
「わたくしは。王族として役目があります」
……………ずいぶん変わったな。
我儘姫さんだったのに。
正直ぐいぐい迫られて食われるかと思ったんだよな。
「人は変わりますよ……」
どうやら考えている事はバレたようだ。
「湯島君」
新庄が声を掛けてくる。
「今まで、クーを使って情報を得ていたけど、クーですら探れなくなっている。だから」
「分かってるよ」
異変があったのは新庄と二人で話していた時だった。
クーと言われた魔人――クラゲ姿だったが――が慌てたように床一面に王城の様子を見せた。
そこのは黒い靄。
街を飲み込んだその姿はクーすらその先を見る事が出来なかった。
何かあったのは言われなくても分かった。
小刻みに震える。
大丈夫。これは怖くて震えてるんじゃない。
これは、武者震いだ。
「でも、大丈夫」
そうだ。笑え。
どんな危機も乗り越えたんだ。
「勇者は皆の希望を背負う限り負けないから」
そうだ。それが勇者と言う存在だ。
新庄は苦笑する。
あれっ、なんか変な事言ったか?
「ゲームや漫画と違うんだよ」
「でも最近のラノベだよね。魔王と手を組むのは」
よくあるお約束になりつつある。
「それは、勇者と魔王が複数いる世界でのお約束な気がするけど」
いや、別にそれだけじゃないけど。
「まあいいけど。無茶はしないでね」
新庄さんが心配してくれる!!
あっ、喜んだけどやましい気持ちはありません。
だから、そこで殺気を放たないで。
新庄の丁度死角で殺気を放っている魔人三人の空気に負けて謝る。
うん。新庄の部下達は怖い。
忠義心が高くて新庄に絶対服従。
(でも、俺が何かすると絶対妨害してくるな)
敵に回したくない。
「湯島君。行くよ」
新庄の声にぼんやりしてたらいけないと頷く。
そして、景色は変わった。
――地獄絵図に。
真緒「勇者のハーレム怖い」
勇者「新庄の部下怖い」
結論:似た者同士




