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王を継がせられる幸福

かつての王と未来の王

  第238話  王を継がせられる幸福

 結界は再生した。

「さてと…」

 それを確認して大きく伸びをする。


「マオ……」

 玉座にはすでに触れない。ただ近付ける限界まで近づいて玉座を見ていると、後ろから新たな王候補が近付いてくるのが見えた。


「――転移の術を使って勇者が魔王――司祭を討ちとりに行く事になる」

 そしたら魔王候補は必然的に一人。シトラだけになる。


「魔王か……」

「驚いたな。生き返らせて魔族にした元人間が魔王候補になるんだからね」

 そう、こんな短期間で、

「マオは……」

「私はただの抜け殻。……いや、出がらしの方が正しいかな。本当なら神に昇格していたんだけどね」

 どうしてこうなった。

 だけど、

「おかげで面白い光景が見れた」

 勇者と魔王が手を組むなんて今までなかった事だ。

「次の王に願いを託せる」

 人と魔族の共存。

 それを望んだかつての魔王が、同じ望みの次の王に託す。


「道を間違えないでね」

 私は間違えた。

「――大丈夫です。俺には、シヅキがいます」

 シトラの傍にはシヅキの姿。

 支えると誓った強い意志。それを宿して強くなったかつての半魔。


「なら、大丈夫か」

 なら、任せていいだろう。


「………」

 勇者は司祭を討つだろう。

 それを疑ってない。

 だけど、それで、


 それで、この世界の混乱は収まるかと言えばそうではないだろう。


「……」

 新庄真緒として、生きてきて16年。

 正直短いが、ラーセルシェードで考えると長い方か。


 まあ、満足できたと言えばできたか。


 覚悟はできている。

 元々魔王であった頃に出来ていた覚悟だ。


 大丈夫だ。ちょっと。いや、大分痛いだろうけど。


 ――おまけの人生を楽しんだからもういいだろう。


「マオ……」

「んっ?」

 シトラの眼差しがこちらに向けられる。

「自己犠牲は遺恨を残しますよ」

 見透かされる。

「――バレてた」

「まあ、予想付きますよ。――俺も魔王候補なので」

 それに、

「バレないと思っていても案外バレやすいモノですよ」

 にこっ

 笑って告げるのに怖いのは魔王の貫禄と言うやつだろう。


 いい魔王になりそうだ。

 じゃなくて、

「まあね。私一人の犠牲で収まるとは限らないけど」

 終止符を打つきっかけになるだろう。


「人はね。弱いから。何かに責任を押し付けて楽になりたいモノでね」

 魔王宣言して表に出たから。

魔王わたしが全ての元凶だと片付けないと勇者にお鉢が回ってくるからね」

 全ての元凶を魔王わたしに押し付けて、混乱を治める。


 そして、人の平穏を作ってから。


「神に殴り込みを掛けに行かないとね」

 その行為すら神からすれば面白い事になるかもしれない。だけど、

「それくらいしないと止まらないでしょう」

 と、苦笑いを浮かべる。


「全く……」

 ため息。

 シトラも複雑そうにしてるが説得は出来ない。

 必要なのだ。それが、


 そして、それが出来るのは現状。新庄真緒わたし湯島正樹ゆうしゃしかいないのだ。


「じゃあ、もう会えないだろうけど、元気でね」

 そろそろ転移しよう。

「――魔族は欲で強くなります」

「うんっ?」

 呼び掛けられた。うん。知ってるけど。

「生きたいという欲は持ってくださいね」

 シトラの言葉。


「………胸に刻んでおくよ」

 そう返すのが精一杯だった。


 ――その会話をずっと聞いている存在にこの場に居る者は全員気付いてなった。







死亡フラグを建設中

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