民
翻弄されている様子を触れるとしたら本編じゃないよな
幕間 民
人々は驚くのに疲れていた――。
霧によって、魔王によって苦しめられている日々。
それに終止符を打つ為に勇者を召喚した。
――平和になった。そのはずだったのに。
共通の敵。
それが無くなった事で崩れる均衡。
我欲に溺れ、今まで協力していた者同士が戦争をする。
魔物は魔王と言う主柱を失った事でより活発に暴れまわる。
――魔王と言う存在は魔物。そして、権力者の手綱を握っていたのではないかと唱える者も現れ。その者らは不敬罪で処刑された。
それでも、人の口は閉じなかったが。
そして、今まで霧があった事で知らなかった外の世界。そこは天国でも理想郷でもなく、敵の居る世界だった。
弱い者は最初に切り捨てられた。
強い者は保身か欲の為に動いて見向きもしない。
民の心は疲弊して、弱っている所で再び勇者が召喚された。
現状を打破してくれると期待しているのは僅か。
――ほとんどの者は、これ以上掻き回すなと思っていた。
そして、先日。
『魔王が復活した――』
慌てふためいたのは一瞬。
だが、一瞬。
これからの事に怯えていたが、それが杞憂に過ぎなかった。
――統率の取れた魔物は魔王の一声で人を襲うのを止めた。
神殿関係者は勇者のおかげだと告げるが誰も信じない。
奇跡を起こしたのが魔王だと目の当たりしている者が多いのだ。
人の心は神殿――ユスティ教から離れている。
それはおそらく真名を握られて自由を奪われた女神の望みだった事。
女神ユスティの復讐が成立した瞬間。
女神の消滅は誰も知らない。
だが、してもしなくても関係ない。
もう、民にはどうでもいい話だから――。
さて、最終章(予定)になります




