信頼
前半は勇者のうざさにイラつきましょう(笑)
第236話 信頼
勇者を連れてある一室――客室どんだけあるんだろう――に入る。
手にはクラゲ姿のクーを連れている。
「――で、話って?」
わくわく
何勘違いしてるんだろう……。その表情弛んでいて見ていて気持ち悪いぞ。
「巫女の事」
おいてあった椅子を曳いて、そこに座る。勇者にも座ればと目で伝える。
………何でそこでしょげてるのか分からないけど、勇者は迷ってソファに座る。
「勇者。ユスティに何かした?」
「何かって…、巫女の話じゃんかったの?」
不思議そうに尋ねて来るのに、
「これから話す事に関係あるから」
と返すと少し迷って、
「実は……、かくかくしかしかで」
「ふんふん成程…で、分かるかっ!!」
~~~~~~交互に情報を伝達中~~~~~~~
「……成程」
「よくわからないんだけど……?」
理解したと呟くが、勇者に対して説明していなかった。
「流石勇者だね……」
告げると、勇者が変な踊りを始める。
顔が変な感じで崩れて、『褒められた。褒められた』と変な歌を口ずさんでいる。
「………」
こんな時どうすればいいのか分からないの。
嗤えばいいと思うよ。
と脳内で会話をして――人は困惑すると無表情になるんだな――、
「話進めるけど」
と告げる。
……勇者と魔王は対だけど、あれが自分の対だと考えると切なくなるな。あんなのに殺されたのか私って……………。
「あっ、うっ、うん……」
勇者は顔を赤らめて――羞恥でだろうな――こちらを見てくる。
「まあ、巫女もあまり分かってないだろうけど、ユスティの力を与えられたという事は彼女は第二のユスティになる可能性があるって事」
「第二って……」
「偽りの女神」
「えっ……」
勇者の顔が青ざめる。
「そういや、湯島君はこの戦いが終わったらどうする?」
「どうするって、それ死亡フラグ……」
「この世界の残るか、元の世界に帰るかって事だけど……」
死亡フラグって、縁起でもない。まあ、死亡フラグって口にしたから回避されたかもしれないけど。
「……世界を戻った時」
「うん」
「世界を救った勇者なのに、何も変わらない平凡な日々が続いて物足りなくなったんだ」
世界を救ったのに誰一人敬わない世界。ただの高校生という一括りにされる日々――。
「それが不満で、物足りなかったから。――今度は残りたいと思ったんだ」
「そう。――正直勧めない」
勇者の言葉にそう返す。勇者もそう言われると思っていたのかだよねと力無く笑う。
「湯島君…勇者は分かっているのか知らないけど、私たち魔王は魔王になった瞬間に『勇者。または魔王は死んだ後神になると決められているんだ』というのを知らされる」
情報の開示。
「それは……⁉」
「でも、ユスティは例外。本来は神になるはずじゃなかったんだけど。様々な条件が重なって神になってしまった」
でも、もう彼女はいない。
「神は性質悪いよ。おそらく次の玩具に巫女を使うかもしれない」
力を明け渡したという事はその可能性がある。
「……巫女をリジーを見捨てろと言いたいのか?」
「――違う」
世界に戻るという事はそう言う事かと怒りをあらわにする勇者に、淡々と返して、
「今は巫女の事じゃなくて、勇者の事。はっきり言うとこの世界に留まると確実に神になるけど」
元の世界に戻れば回避される可能性があるけど。この世界に居たら確実に神にさせられる。
「……」
「まっ、巫女に話を戻すけど、巫女も女神にさせられる条件が揃ったのよ」
あの白金の光。浄化の力――聖女。
見た者は言うだろう。神の奇跡だと――。
「魔王化した司祭に対抗するにはそれくらいの力は必要だけど。ユスティが消えた今。人は新たな神が必要になる」
そう、自分達の都合のいい神を――。
「――守ってあげなよ」
これから一番危険になるだろう。女騎士や魔法少女の様に魔王とそれに付随する者の加護じゃないから人にとって一番利用しがいのある立場にさらされた。
「たぶん。戦いで死んだら即座に神にされる」
「――守る必要ないよ」
声がした。
この状態でも空気を読まないのかと文句を言い掛けて、
「――彼女は強いよ」
その眼差しにはっきりと見えるのは信頼。そこのは確かに勇者と巫女のつながりを感じて……。
ゾクッ
――寒気が走った。
これが、ギャップ萌え…




