湯島と新庄
この二人の名字を忘れそうだな。勇者なんて、名前が出ること少ないし。
第235話 湯島と新庄
「新庄さん⁉ リジー!!」
転移で魔王城に戻ると、すでに戻っていた勇者達が安堵したようにこちらを見てくる。
「良かった。なかなか戻ってこないから心配したよ」
駆け寄ってくる勇者は、こちらに向かって安心した様に笑うが、
「リジー………?」
何かに気付いてじっと巫女を凝視する。
………凝視するのはいいけど、巫女が顔赤らめているからそれくらいにしてあげたら?
巫女が何か決心した様に目を閉じてるけど…。
「湯島君…。それくらいにしたら?」
もうやめて、巫女のライフはゼロよ!
という感じだけど。
「えっ⁉ 俺何もしてないけど……」
ちょっと巫女さん。勇者がこちらを見ている隙に何で睨んでいるんですか。いいところだったのにと顔に書いてありますけどこいつ無自覚だから。
「女心を理解しようね……」
うん。そこからだ。ラノベの主人公みたいに優柔不断な空気を読まない態度もやめようね。
ほら、女騎士や魔法少女も睨んでるからやめて。
第一、私は勇者は好みじゃないから敵対心もたれる方が迷惑なんですけど……。
私の好みはもふもふだ!!
じゃなくて、どちらかと言えば綺麗系だ。
平成〇イダ―で言えば、二人目の方がいい。
ダブル主人公の少年漫画なら突っ走る方よりもフォローする方が好みだ。
こんな主人公ポジには心惹かれん。
「あっ……」
そんな事を考えている場合じゃなかった。
「湯島君。話があるんだけど…」
そこでぎろっと睨まないでくれませんかね。
今は緩和されたけど、苦手なのは変わってないんですから。
「えっと、ここで?」
「いや……」
誤解されるんだろうな。分かってるけど。
「二人っきりで」
おいっ、勇者その締まりのない顔はやめろ。ハーレム組もやめろ。その嫉妬で歪んだ醜悪な顔は。
はぁ
溜息を漏らしても悪くないよね。
頭痛がするけど気のせいじゃないよね。
「アカネ…」
こいつらの方をお願いねと伝え、
「クーおいで」
お留守番していたクーに声を掛けるとクーは嬉しそうにやってきてぎゅ~と抱き付いてくる。
ああ、可愛い。
癒される。
えっと、アカネとリムクライン。その嫉妬に歪んだ顔はいただけないな。
「リム」
「はい!!」
「私がいない間。この場に居る全員の守護を頼むよ」
結界が再生したから精霊王も冥王も帰ってしまった。まあ、その気になれば声は聞けるだろう。――加護を与えているのがそれぞれここに居るから。
「はい」
役割を与えられてリムクラインがご満悦だ――表情は物静かな無表情に見えるそれだけど、さっきのよりはましだ。
「アカネ」
「はい。ありゅじ」
「アカネはさっきの事を説明してあげて、巫女にも分かりやすく」
分かってないだろうしな。巫女は――その危険性も。
「新庄さん?」
何を期待していたのか――ああ、言わなくていい。聞きたくないから――崩れた表情を戻して尋ねてくる。
「勇者に話したい事がある」
大事な事だ。今後の方針とかも考えて。
真緒様は勇者より空気が読めるので飴と鞭はきちんと上げれる。魔族と言う種族が魔王に言われるだけで喜ぶわんこ気質なのもあるが




