その世界は…
謎解き
第232話 その世界は…
気が付いたらその救い主の膝の上に乗せられていた。
白銀の髪の美しい王。
王様。
王様は何でも与えてくれる。
美味しい食べ物。
……そこで初めて美味しい不味いというのを感じる事を喜べた。不味いモノ=毒。ではない。味を楽しむ事よりも食べられる事に重きを置いていた自分からすれば大きな変化だった。
素敵な衣装。
……動きやすい服。防寒を第一の考えていた日々だったので着飾るという楽しみを今まで知らなった。
傅く従者。
何から何まで世話をされる日々。働かなくていい生活なんて知らなかった。
幸せ。とっても幸せ。
――再び暗転。
全てを持っていた。
身を飾るたくさんの宝石も。
有り余るほどの食べ物も。
常に視線に入ってきた召使い達もみんないなくなった。
………どうして?
答える声はない。
どうしてなの?
答えを求めても返事はない。
全てを知っている父は墓の下。
その父の日記には、あのそっくりだった奴隷は自分のきょうだいだった事。
そして、生贄に出した者の家族には恩賞を与えられる国の方針で、父は実の子だと知らずに奴隷として接して、今まさに真実を知った後にその恩賞を受け取ったというその罪の呵責で財産をすべての財産を貧しい者の為に使おうと宣言して、その者らの役に立つ物を作ろうとして――。
――騙された。
何もない。
金を持っていないなら用が無いと皆去っていった。
甘い汁ばかり吸っていたくせに。
そんなわたくしを低く見たのか支援と言う話を持ち掛けた商人が居たけど、ただが商人の元に嫁ぐなんて、冗談じゃない。
誰か助けてよ。
わたくしは幸せになるべきものなのよ。
こんな不遇な暮らし冗談じゃないわ。
あいつさえ……。
あの奴隷がいなければ……。
そうよ。
王様の生贄は幸せに暮らせるって聞いた事あったわ。
どうしてあんな子に譲ってしまったのかしら。
王様なら助けてくれる。
王様なら救ってくれる。
王様なら――。
*
おかしい。
ふと、そんな想いに囚われた。
贅沢で暮らしていた。
貧しさで暮らしていた。
二極の環境を交互に見せられて、どちらも助けを求めている事に違和感を覚えた。
助けを求めてる?
誰が?
奴隷の子が?
貴族の子が?
その助けを求めているのは本当は『誰』?
いや、それより、助けを《わたくし》が求めるのか――。
『……これは記憶ではないのですね』
記憶だと勘違いしていた。
てっきり女神とその姉妹の記憶だと。
でも――。
『これはわたくしが想像したお二人のお話なんですね』
奴隷の子が味わった苦しみも幸せも想像。
貴族のこの栄華も憎しみも想像。
だって、奴隷の子は幸せを甘受せずに恩を返そうと必死だった。
だって、貴族の子は僅かな部下を残して生贄になり替わろうとした。
じゃあ、この世界は何だろう…?
一体、何をさせたい?
わたくしはここで何をすればいいのか。
*
「流石に気付いたか」
――じゃあ、ここから先の答えが楽しみだわ
見守る者はそれぞれ囁く。
結果は――。
巫女の想像のユスティとラシェル。




