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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
結界再生
249/290

底辺と最上

さっさと終わらせたい……。

  第231話  底辺と最上

 どれくらいここに留まっているんだろう。


 ある時は貴族としての栄華を極めて。

 ある時は食べるのに必死で生きていく。


 自分じゃないのに自分のような感覚。

 鞭の痛みを覚えた次の日に。鞭を振るう感触を覚える。


 食べ物にありつけずに空腹に耐える次の日に。好みじゃなかったからと判断して床にひっくり返す。


 何でも手に入る環境。

 食事すらありつけない環境。


 底辺と最上。

 奴隷と貴族と言う真逆の光景を見せ付けられ、体験して自分が何者か分からなくなる。


 ………わたくしは誰でしたか?


 分からない。


 分からない。


 思い出そうとすればするほど交互に迫ってくる感覚が狂わせてくる。


 タスケテ…。


 助けて……。


(助けてっ!!)

 張り裂けんばかりに叫ぶ。

 気が狂う。

 正気を失っていく。……狂気が支配していく。


 自分が自分で無くなっていく恐怖から逃れたい。


 誰でもいい。どんな存在でも救ってくれるなら。


 ――暗転。


『生贄を出さないといけなくなった――』

 声がする。


 貴族の少女は叫ぶ。

『生贄になんてなりたくない――』


 奴隷の少女は、

『………』

 選択肢を与えられる事無かった。


 心は死んでいた。壊れていた。その方が楽だったから。

 そんな壊れたのを楽しげに見ているもう一人の自分――。


 どうでも良かった。生贄と言うのがよく分からないがこれ以上酷くならないだろう。


 ――奴隷の方は諦めていた。


 貴族の方は愉快だった。

 自分に似たそれがあるのが許せなかった。

 知らないなら、知らないままでいれば気にならなかった。

 目に入ってしまった。気付いてしまった。

 それなら、自分の知らない所で不幸になるのは許せなかった。

 だから、自分で壊す事にした。

 だから、壊す事に躊躇わなかった。


 ――生贄なら、面白おかしく壊れてくれるだろう。そう思うと笑いがこみ上げてくる。


『それが、……女神の』

 知りたくなかった。知らないままでいたかった。


 知ってしまった痛み。

 負の心。


 苦しい。

 苦しい。


 タスケテ。

 助けて。

 助けて――。


 再び、暗転。


 最初に見えたのは白銀。

 闇を打ち払う光。

 助けてくれる光だ!!


 とっさにそう感じた。


 この光にすべてを委ねればいい。

 その光にすべてを任せればいい。


 差し伸ばされる庇護者の手。

 救い主。


 その手に任せてしまいたいと思わせる絶対的な安心感――。


 そう、その手に――。

                    *

 花冠を作成していたかつての魔王は巫女の空気が変化するのを感じてそちらを見る。

「――失格かな」

 巫女を見て一言。そう漏らす。

                    *

 巫女に試練を与えていた女神は嘲笑う。

――こんなものね

 期待しなくて正解だった。


 魔王と女神。

 真逆の立場にいる二人がその巫女の選択を心配し、面白がり。――期待する。


 彼女の選択が期待しているモノではなかった。


 彼女の選択がある意味予想通りだった。


 それでもこの場に居る時点で干渉できないと見守るしか出来ない魔王は花冠を作る。


 試練を出した女神はヒントを与える気が無いので、傍観者に徹している。


 まだ、決まってない。


 彼女の――巫女の選択はまだきちんと決まってない。

 だから――。


「間違えないで」

――期待を裏切りなさい


―ー「貴方の望みはそれではなかった」

 二人の声が重なる。


 真逆の二人はその存在に声援を送った――。


アカネ「……」

 主の制作した花冠を被ってご満悦

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