記憶の再現
女神様巫女で遊んでます
第230話 記憶の再現
さて、試練なんてもったいぶってしまったが正直何をしようか迷っていた。
取り敢えず、精神世界に行かせたのはいい。だけど、問題はどうしようかという事だ。
まあ、取り敢えずそれらしい事をしてみましょうか。
そう結論に立って、
「……」
ふと、試してみたくなった事があった。
もし、彼女だったらどういう反応をしたのだろうか。
そんな事を考えてお膳立てをしてみる。
*
巫女の精神世界。
『ここは…?』
辺りをきょろきょろ見渡す巫女。
そこは小さな市場。
『試練だと思って構えていたんですけど…』
ここは一体…?
首を傾げ、情報が無いかと辺りを見渡して……。
「えっ……?」
檻。
その檻の中に自分が居た。
いや…。
『自分に似ている…』
そこで気付く。ここは…、
『ユスティ様の記憶の再現なんですね…』
手錠を付けられて、ぼろぼろの身体。
この世界では巫女と同じ姿だけど、かつてはユスティと同じ姿だった。
『でも、どうすれば、合格できるんだろう……』
答えは知っている。いや、末路と言うべきか……。その段階で、彼女と違う道を歩いてみるのがいいのか。でも、それを望んでいるのか。
『まあ、でも……』
檻の中に囚われている自分を出さないと話は進まないのだろう。
そう判断して人買いから買う事にする。
さて、ここからどうすればいいのか。
普通は女神と真逆な事をすればいいのだろうが……。
――暗転。
『えっ……⁉』
檻の中。
『えっ⁉ これはどういう事ですかっ⁉』
必死に檻から出ようと暴れる。
『煩いっ!! 大人しくしてろ!!』
振り落とされる鞭。
痛み。
『それでいいんだよ』
『おいっ、商品を傷付けんなよ』
『はぁ!? 俺がそんなへまするか』
痛い。
熱い。
………怖い。
恐怖が抵抗を奪っていく。
抵抗する気力を失い。檻の中で大人しくしていく事しか出来ない。
それはずっと、続いた。
何かあると振り下ろされる鞭。
少ない食事。
その都度告げられる言葉。
それがどんどん動きを奪っていく。
心を殺してくる。
『お前が悪い』
生きていてごめんなさい。
『大人しくしていればいいんだよ』
大人しくします。逆らいません。
『商品に心はいらない』
心なんて持ちません。
『お前は……』
わたくしは……。
――道具です。
心が、壊れていく――。
再び、暗転――。
綺麗な服。たくさんの家具。
自分に傅く使用人。何もしなくていい。欲しい物など欲しいと思う前に与えられる。
――好きな事だけさせてもらえる日々。
自分を中心に世界は回っている。
『何ですの。これ……』
さっきまで自分は道具だった。それなのにどうして今度はここまで贅沢させてもらえるの。
自分は道具ではなかったのか。
自分は――。
わたくしは、いったい何――。
*
道後として育った者と貴族として育った者。同時に見せれれて。さて、どうする――。
女神は楽しげに笑うのだった。
降り幅広いな……。




