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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
結界再生
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信じる者は救いをもたらす

巫女が正義の心を取り戻した

  第226話  信じる者は救いをもたらす

「……」

 その光を見て最初に思った事は、

(浄化されなくて良かった~!!)

 ……だった。


 舐めていた。

 鬱モードだったから油断していたけど勇者の仲間で魔族達から生き残って魔王わたしを倒したんだ。実力はかなりある。


 考えてみれば人間の祈りは馬鹿に出来ない。

 勇者の剣は人間の祈りの集合体だし、祈りも欲だ。


「それにしても……」

 偽りだとさんざん言われていたけど、それでも曲りなりでも神だ。

 …………………神と言うのは侮れない。

 

「誤解してきたな……」

 神になる魂があるんじゃなくて、信じられたから神になるのかもしれない。

 そこに元勇者とか元魔王などというプロセスが無い。


 まあ、本人はどう受け取るか分からないけど。


「――奇跡を起こした実感はどうよ?」

 ああそうだ。奇跡を起こした本人に尋ねてみないとと聞いてみると、

「奇跡ではありません。――救われたいと救いたいと願った結果です」

 わたくし一人が起こした事ではない。そう言い切る姿に、

「謙虚だな…」

 こういう性格だっけ? 確か、神の盲信的で傲慢だったけど。


「……思い出しただけです」

 そっぽ向いて――その顔が赤い気がする――不機嫌そうに、

「わたくしが勇者と共に旅する事になったのは神殿からの命でもありましたが、救いたいと思ったからでした!! でも、魔王あなたを倒してからいろいろ環境が変化したんです」


 魔物で苦しんでいる人々を救いたかった。

 霧に囚われていると思っていた。

 だから元凶の魔王を倒しに行こうと勇者の供になった。


 環境の変化…あるよな…。

「いえ、違います。――それはいいわけですね」

 弱さの。

 自嘲気に笑い。

「英雄…」

 ぼそっと零れた言葉。

「んっ?」

 英雄? 英雄願望なら勇者が魔王化して居た欲だけど?

「勇者の供として行動していたわたくし達は英雄と言われて人気になったんですよ」

 ああ。そうだよな。そうなるよね。

 確かに変化あるわね。

「魔王を倒した事で自分が凄い存在だと思って……傲慢になっていたようです」

 傲慢故に目を閉じていた。自分が何をしたかったかを忘れていった。


 崇められて煽てられて、民の声に耳を傾けなくなっていた。――それに気付かなかった。

 そのうち、霧が消えた事で起こった様々な事で魔王を倒したせいでと責め立てられて英雄と崇めたくせにと民を見下した。

 ――民を救いたいと思っていた心を忘れて。

 そして、神託。

 やはり自分が間違っていなかったと確信した。その信託自体間違っていた。神と崇めていた存在が自分が一番救いたかった民の姿だと、神に仕立て上げた存在が自分が一番許せなかった民を苦しめる存在の正体だと知って自分が揺らいだ。

 神の力で勇者の補助をしていたのにそれが出来なくなるほど動揺して――。


「――思い出したからいいんじゃないかな」

「えっ?」

「思い出したんでしょう。だから今その話をしてる」

 愚痴なのかは懺悔なのか少なくともそれを魔王わたしに言うのもどうかと思うが……。そう言うのは勇者に言ってくれ。

「そう…ですね」


 自分のしたかった事。それは――。


 ぞくっ

 何だろう嫌な予感がする。――頼むから巻き込まないで欲しい。

「わたくしは勘違いしていました」

 うん。何が?

「神が間違っているのを嘆くのではなく、神が間違っているのなら正すのが真の信者!! 神の名で悪行をするのが居るのならわたくしは英雄の名を持って正します!!」

 民を救うのはそれしかありません。

 どうしてそうなった~!!

 力説しているけどどうしてそういう結論に走ったのか聞きたくなった。でも、怖くて聞けない。


 宗教の宗派って、こうやって生まれたのかな~。

 つい、現実逃避をしてしまう。


「ありゅじ?」

「ああ。うん…何でもないよ」

 うん。アカネ。今は現実に戻してもらいたくなかったな。

 もう少し逃げたかった現実から。(遠い目)


「……」

 うん。ごめん勇者。

 どうやら貴方の供を一人間違った道に歩ませる事になりそうです。




ユスティ「なんか面倒な事になりそうなんだけど…」

ラシェル「がんば!!」

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