神
勇者の取り巻きだけだと思ったら大間違いです
第225話 神
ようやく北東の方から光が出現するのが見えた。
「これで結界も再生するな」
一安心と言い掛けて、
「ありゅじっ!!」
アカネがに何かに気付いて警告を発する。それと同時に庇うように構える――私だけではなく巫女も護衛対象に入っているのは流石だな――と、
「何あれ…!?」
一言で言い表すなら醜悪だった。
粘土の様に人体をほとんど残したまま固めた姿。
どんだけの人間を集めたのか不明だが、大勢の人間を無理やりくっつけて巨大な馬の形を作り上げている。
「助けて…」
「苦しい…」
「痛いよ…」
あちらこちらから助けを求める声がする。
わなわな
巫女が信じられないと目を大きく開いてそれを見る。
「魔王!!」
「…私は知らない」
あんな出来の悪いモノを作ってどうする。
タスケテ
タスケテ
クルシイ
イタイ
キモチワルイ
………つくづく醜悪だ。
材料――そう言いたくないが――は人間。人間の意識を残してせめて壊れ、狂えば楽になれたのにあえて狂わせない様に細工して材料となった人間の感情をこの物体の魔力に転じさている。
「ありゅじ」
「今の私じゃ無理」
魔王であったけど魔力は無いし。せめて私の支配下だったら何とかなったけど、これはおそらく、
「司祭の作った魔物だな」
……魔族とは言いたくないな。
「神聖魔法とか神の浄化とか。逆に冥王の魔力をぶつければ解放できるけど、私が現役でも無理かな」
苦しみを長引かせるだけで解放させれない。
「神…」
ぴくっ
巫女が反応する。
「――この者達はユスティ教の信者だろうね。十中八九」
それ以外の信者が残っているとは思えないし。
「…………」
巫女の瞳が迷いで揺れる。怯え、恐怖。それでも――救いたいという強い意志が宿っている。
「……」
口出さない。
アカネも何も言わずにお手並み拝見とばかりに様子を見ている。
「魔王…」
「今は魔王じゃないけどね。――真緒でいいよ」
「じゃあ、――新庄さん」
勇者がそう呼んでいるからな。
「わたくしに救えると思いますか?」
問い掛けは迷いを払拭させる為だろう。
「――さあ」
それを魔王に聞くの?
そう尋ねると、
「いいえ。――ただ、わたくしは上手くいかなかった場合の原因を押し付けたいだけです」
あらっ、正直。
「――でも、違いました」
巫女から湧き上がる力。
「魔族は欲が力となり強くなると言いましたね」
「そうだけど」
「――わたくしも欲があります」
願いなど綺麗に言っても所詮欲だ。
「欲望なら負けないつもりですよ」
にこっ
笑う。
清楚な雰囲気で上品に。
そして――、
「――愚かでした」
わたくしは。
「人を救いたい。そう想い勇者と共に旅をしました。信仰心が揺らいだぐらいで目的を失ってどうするのです」
「……」
色々突っ込みたかったけど言えなかった。
開き直った。そんな態度で彼女は祈る――いや、宣言する。
「この者らに自由を――」
……奇跡だった。
白金の光が生まれ、現れ、包み込む。
癒しの光。救いの光。
神の御業。
いや、神ではない。神と言う存在を利用しての彼女の起こした奇跡――。
「聖女。だな」
そう言えるだろう。この行動は、現に苦しめられていた者らが全て救われるのをはっきり感じたのだった。
白銀の獣の王。
白金の光。
似てるけど違います




