女神と言う存在
石柱を破壊した結果がこれだよ
第224話 女神と言う存在
女神――そう思っていたけど、真の女神じゃない――に会うのは凄く久しぶりだ。
「お久しぶりです…」
ユスティ様とさっき呼び掛けてしまったが成り立ちからして名を呼ばれるのは本当は嫌かもしれないと思って名を呼ばない――それくらいは空気読めるんだだという突っ込みがどこからか聞こえたけど気のせいだよね。うん――で、挨拶だけに留める。
――お久しぶりです。勇者。……裏切り者
笑っていても目は笑ってない。憎しみで人を殺せるなら殺しているそんな空気を纏っている。
「……裏切り者か」
確かにそうだ。
勇者として召喚してこの世界に呼んでくれたのは彼の方なのにそれを裏切ったのは確かだ。
――まあ、いいわ。あいつらの慌てふためく顔が見れたんだし
あいつら…。
「――それは信者の方々ですか?」
貴方の?
――違うわ。わたくしの神官と名乗る者達の事
面倒だったのよ。そう言い切る姿は今まで見た事無かったもの。
―ーもうわたくしの正体に気付いたでしょう
自嘲気に嗤う。疲れたようにもう――諦めた様に。
「貴方は……」
声が掠れる。
「何がしたいんですか?」
分からない。この女神の望みが。
復讐かと思った。だけど、何となくだけど違う。
確かに俺を魔王にさせて、世界を滅ぼさせる事が出来れば彼女の復讐は成り立つ。
だけど、それにしてはちぐはぐだ。
計画性が無いというか。
……何だろう。分からないけど。
――さあ?
首を傾げ。
――そうね。獣の王を憎み。出来損ないを憎んで、わたくしを束縛していた物を憎み。滅ぼそうと思っていたけど
獣の王と言うのは魔王。出来損ないと言うのは双子の片割れ。束縛していた物と言うのは信仰心かなと予想をしながら話を聞いていく。
「憎むって、労力使いますよね」
以前聞いた事がある。憎むって事はそれだけその対象を気に掛けているという事。愛情の反対は憎しみじゃなくて、無関心。
新庄が自分を恨んでいないのはもう無関心に近いのだおろうと思うと切ない。せめて憎んでくれればお詫びも出来るのにそれもさせてもらえない。
今の女神は、まるで憎み続けて疲れたヒトだ。
女神は迷って途方に暮れている子供の様に。
――こういう時どうすればいいのか分からないのよ
と告げてくる。
――憎んでいれば楽だった自由を得ようと足掻いていたのに
目の前にはさっき壊した石柱。
そこに触れて。
――何があったと思う?
尋ねられても分からない。
くすっ
笑う声。
それに反応するように石柱が割れ、その中には、
「ユスティ様……」
鎖に縛られて動きを封じられている女性の魂。
思わず笑っている女性と封じられている女性を交互に見る。もしかしたら出来損ないと呼ばれた双子の方かと思ってしまったのだが、
――憎む理由がなくなったのよ
石柱の魂は消えて、女神の中に溶けていく。
「もしかして、貴方の……」
――真名が封じてあったの。それがあるから都合のいい女神として酷使されていてね
でももうない。
自由だ。
――あんなに欲していた自由なのに
自由を手に入れたら復讐を果たすつもりだった。
いや、自由こそなかったが復讐に進んでいた。
だけど――、
――困ったわ
どうしよう。
「…………」
そう言われても。こちらもどう答えれば分からない。
ある意味裏切った俺の意見なんていらないだろうし……。
「あっ!!」
そう言えば。
「巫女に…会ったらどうですか?」
今巫女の傍には新庄も居る。
「貴方を信じている俺の仲間です。今は迷っているけど、もしかしたら…」
貴方の求めているモノが見つかるかも。
綺麗な事を言いつつも巫女に…新庄に押し付ける事にした。
ラシェル「待ってほしいと思ったけど、まさか憎む以外存在理由がなかったのか…」




