最後の試練
になるといいな
第223話 最後の試練
久々に魔物――あんなの魔族の末端にも入れたくないとリムクラインが告げたので魔物呼びする事にする――を倒して、
(やっぱ。こうやって活躍すると勇者だと実感できるな~)
とついほくほくしてしまう。
まあ、ほくほく出来たのも一瞬だけど。
「他が設置済みだな」
リムクラインが空を見上げる。
北・東・南・西
それぞれに光の柱が出現しているのだ。
「俺ら待ち?」
「ああ…」
最後か~。やっぱ戦闘があったからな。
「まあ、主役は最後に来るもんだし」
「…………」
あっけらかんと告げたら。
ひゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
氷点下の眼差しがこちらを見てくる。
うん。止めて。
謝りますので。
(俺勇者なのに!! 勇者なのにっ!!)
この扱いの酷さに泣きそうだ。……まあ、泣かないけど。
泣いても態度変わらないよな。絶対。
「――そういや」
無視されるよな。きっと。
まあ、その時はその時だ。
「何で結界を張っていた頃霧がこの地域を覆っていたんだ?」
霧いらなくない?
「見えるのと見えないのでは大きく違う」
あっ、答えてもらえた。珍しい。
「見えないのなら外に行こうとも思わないだろう」
変わらない景色なのに、壁一枚で隔たれている外。
「性善説で言えば、壁のぎりぎりで盗賊か山賊に襲われている者を見付けたら助けようとするだろう。だが、壁の向こうで行く事が出来ない」
逃げたくて助けを求めたくて壁に拳を叩き付ける者がいても助けられない。壁の向こうで嬲り殺しにされるのを黙って見ている事しか出来ない。
助けられるかもしれないのに助けられない。それが何度も起こる可能性がある。
「気が狂うだろう。それが続くと」
「……成程」
うん。それは辛いな。
まあ、見えてればやらないかもしれないけど見えていても自分を裁かないならそれで気が大きくなっていく輩も居るだろうし。
「じゃあ、性悪説は?」
性善説もあるなら性悪説もあるだろう。
「……結界の中と外。そこで貧困の差が出てきたらどうなる?」
そこで助けたいと願う者がいればいい。それで自分達が選ばれたのだと勘違いする者もいるかもしれない。
「余計な情報は結界を壊したいという考えに行きつくからな」
「…………無くても結界を壊したいと思ったけどね」
結界を守っているモノじゃなくて、捕らえているモノと思ったからこその勇者の召喚。
召喚された勇者が言う言葉じゃないけど。
そんな話をしているとその装置だと思われる石碑が見えた。
「確かここに…」
魔王の身体の一部を入れれば…。
――本当にいいの?
声がする。
急に目の前が真っ暗になり。近くにいた筈のリムクラインの気配も消える。
―ーお久しぶりです。勇者
目の前には一人の女性。
「ユスティ様…」
自分を勇者に選んでくれた女神。その女神が艶やかに、不機嫌に微笑んだ。
これにて一件落着(打ち切り漫画だとここで終わる)




