勇者の役割
何も言うまい……。
第220話 勇者の役割
きぃぃぃぃぃぃん
鳥の化け物は一声鳴く。
うえぇぇぇぇぇぇん
しくしくしく
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
その鳴き声に合わせるように大勢の泣き声も響く。
「悪趣味だ」
リムクラインが怒っている。
「こんな不快な物を魔族にしたのか」
「魔族にしたって…」
どういう事?
「そのままだ。これは新たな魔王が作った新しい魔族だ」
真緒様の作ったモノと勘違いするなよ。
………かなりご立腹だ。
「大体こんな美しさも知性の欠片も無い混ざりモノを我が君がご寵愛するとでも思っているのか魔獣ならもふもふさを獣人ならその調和のとれた混ざり方を愛で、魔人なら元の属性を損なわずに進化した努力を愛でる方だ。これはどうだ!! 混ざり方がグロテスクで、均整も緻密さも感じられる事はない。醜さが前面に出ていて、愛でるどころか嫌悪する。それ以前にその姿では魔獣化獣人か魔人か判別不可能。正体が不明というところで欠点以外見当たらない!! 第一泣き声は何だ。一つの音ならまだ可愛げがあるだろう。不協和音でまるで超音波だ。頭痛でも誘うのか!! それを攻撃に使うにしても脅しがせいぜいだ」
そこまでワンブレス。
いや、そんなところで愛をというかこだわりを主張されても。
「そう言う点でお前など真緒様は評価しない!!」
だから、
「さっさと倒せ勇者」
「はぁ!? 俺かよ!! あそこまで力説してるんだから思えがするんじゃないのかよ!!」
「生憎、あんなものを相手して汚れるのが嫌でな」
真緒様に避けられたらどうするんだ。
こいつ。新庄第一主義だと思っていたけど。ここまでだと思わなかった。
ってか。
「バレないよ」
「バレるバレないの違いじゃない!!」
……何この面倒な奴。
「こんな汚いものに触れて真緒様に愛でられると思っただけで罪悪感が生まれ、真緒様に撫でられ褒められ名を呼ばれるたびに至上の喜びだった者に曇りが出来てしまう事を想像するだけで嫌悪する。真緒様の為だけに居るのにその真緒様を汚してしまう自分に腹が立ち、このまま消えた方がいいのかと行動に移し掛けて、そしたら真緒様を守れなくなる事実を思い出して踏み止まる。そんな自分の矮小差に呆れ、失望する」
真緒様のお役に立つ自分の役目を放棄しているのではないか。
そう言ってくるリムクラインに正直、
(めんどくさい)
と思って苛立ってくる。
(新庄さん。こいつ回収してくれないかな)
新庄が居ないとこんな面倒な奴になると思わなかった。
「………さっさと片付ければいいんだよな」
押し問答する気もうせて、もしかして仲たがいさせるためにこんな外見にしたんじゃないだろうなと穿った見方をして、
しゃん
剣を振るう。
四散していく化け物。
ありがとう
気のせいかそんな声が届いて、ああ。勇者になって良かったと――未だ病んでる台詞をワンブレスで言っている魔人をほおっておいて――心の底から思った。
リムクラインが面倒な正確になったのはなぜだろう。因みにあのセリフはノリノリで作っていた




