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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
結界再生
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野郎二人

花が無い

  第218話  野郎二人

 転移して辿り着いたのは小さな村。

「ここにあるんだよな」

 手には箱。

 中身は……うん。見たくないな。

(入れたの俺だけど……)


「勇者」

「…あのさ。勇者って呼ぶの止めてくれない。今は隠密中だし」

 バレたくないし。

「勇者は勇者だが?」

 そう言ってくる魔人――リムクラインはどこからどう見ても人間だった。

「真名を呼ぶ習慣はないから愛称という事で、マーサとかさ」

 忘れられそうだが、正式名では湯島正樹だ。太郎とか次郎とかぼかしたら変な名前じゃない名前にしてくれてありがとうお父さんお母さん。


 と、つい実家の――異世界から遠いな――両親に思いを馳せてしまう。


「………………………マーサ」

「何? リム」

「その名で呼ぶな」

 うわっ~。すっごく嫌そう~。

「何で? 本名じゃないだろう」

 なら名の縛りは無い筈だけど。

「それは真緒様が下さった名だ。軽々しく呼ばれたくない」

 うん。見事に新庄さんシンパだね。


「でも呼び方…」

「何故、呼ばれる必要がある?」

 呼ばれる必要など感じないと言われて、

「いろいろあるだろう。打ち合わせとか、色々…」

「――必要ない」

 一刀両断。


「……そういや」

 切ないので話を変える。

「なんで、北東?」

 東西南北は分かるけど。


 鬼門と言うのが元の世界の習慣に会ったけど。この世界には無いよな。


「……昔結界がここから敗れたんだ」

 敗れた?

「だから一番確実に再生しないといけないので、お前の力が必要なんだ」

 ああ。成程。

「で、何でリム? 新庄さんとか」

 そういうところなら俺はともかく新庄じゃないのだろうか。


「――真緒様は真緒様で必要なんだ」

 リムって呼ぶなと忌々しげに睨み付けられた。

「巫女が居るだろう」

「あっ、ああ…」

「彼女だけ加護はない」

「あっ……」


 女騎士は冥王。

 魔法少女は龍。

 王女は精霊王。


 そして、自分は、女神。


「真緒様が付いていても意味はないだろうが、必要なのはアカネだ」

 付いていても意味がないって自分の主君に何て言い草だろう。まあ、ただの人間だしな。

「でも、アカ…」

 アカネと言い掛けて止まる。

「あの子がいて、意味はあるの?」

 ただのキツネの魔人だよね。


「アカネは、幻覚と幻想を操る。また真名を使われても幻覚を使用すれば名の呪縛から逃れられる事が出来る。それを期待しているんだ」

「………………ふうん」

 よく分からない。


「分からなくて相槌を打っているだろう」

 ぎくっ

「なっ、何の事かな⁉」

 必死に誤魔化す。


「まあ、どうでもいいが」

 心底どうでもいいとばかりに――うん。ここまで清々しいと色々と切ないけど――言い切られてしまう。


「あそこだな」

 こちらの事は完全無視で、さっさと結界の再生をさせる装置に向かい。


「――リム」

「……」

「おいっ、無視すんな!!」

 すたすた行くリムクラインに叫ぶと、

「………………………………………何だ?」

 さっさと要件を言え。

 取り付く島もないと言う感じだ。

 ……切ないけど負けない。


「あれ…」

 何だと思う? 

 指差したところを渋々見てくれるリムに内心安堵して――無視されるのを覚悟していた――尋ねる。


 巨大な石の柱。

 てっきり結界の再生の装置かと勘違いしそうな代物。

 だけど、

(なんていうか、禍々しいんだよね)

 悪いモノの気がする。

 ……勘だけど。


「……封印」

「えっ⁉」

 封印って…。

「何かを封じ込めてある」

 封じている代物が禍々しいので悪いモノを封じているというのとは違う気がする。


「………解放した方がいいか?」

 尋ねると、

「――好きにしろ」

 あれは勇者じゃないと解放できない代物だ。

 リムクラインが淡々と告げた。

 



勇者「寂れた村だね。この石柱を観光の目玉にすればいいのに」

リム「それをしていたら封印を解放なんて無理だろう」

勇者「……」

リム「観光の目玉を壊したらどんな目に合うか」

勇者「……うん。寂れてて良かったよ」

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