女神と女神の話し合い
女神がゲシュタルト崩壊
第217話 女神と女神の話し合い
この地は崩壊に進んでいた。
そう、自分の狙い通りに――。
『何故…』
それが止まった。
『勇者が消えたのに。魔王はいないのに』
どうしてそうなった。
『――勇者はいる』
不意に声がした。
『貴方の勇者を私が上書きした』
現れたのは見知った顔。
『生贄の女神……』
不快故に顔を歪める。
…………会いたくない存在だ。
『――お説教ですか? 生贄の女神』
イライラする。
正論しか言わないこの女神に。
『上書きって何ですか⁉ わたくしが召喚した勇者は順調に魔王に進化していたはずでしょう』
魔王化した存在がその進化を止める。ましてや魔王と対極な勇者など……。
『もともと勇者だったから可能だったんだ。貴方の見る眼は良かった』
『……………………嫌味?』
『事実だ。――上書きに耐えられるのは貴重なんだから』
何が言いたい。
『そう。それは良かったですね。――で、それがどうしたのです⁉』
相容れない。この地を滅ぼしたい自分と救いたい女神。話し合いの余地はない。
『――滅ぼすのを辞めてもらいたい』
………甘いヒトだ。
『はい。ソウデスカと止まるとでも?』
甘ちゃんだ。だが、これが元勇者だと言われれば納得も出来るか。
『――無理だろうな』
『――よくご存じで』
なら、わざわざここまで来なくても。
高位の者が集っている空間ではない。
神殿でもない。
ここは……。
『貴方を縛る鎖。だな…』
ある小さな村――かつてはそこそこ大きな街だったが今はそんな面影が無い。
ここは……。
・・
『わたくしとあれの過ごした街があった所』
あれと言うのが生贄に出された自分とよく似た――姉妹などと認めたくはない――小娘だとそこの女神には伝わったのだろう眉を顰められる。
『わたくしの運命が狂った場所。忌々しい神に支配された場所』
……本来なら神にはならなかった。
だが、神になってしまった少女。
・・
『わたくしなどまやかし。……ユスティ教など、最初からわたくしとあれが混合して生まれた紛い物』
魔王の生贄にされたのに人を恨まなかった少女。
魔王から逃げて人の幸せを得ようとしていたのに魔王によって殺された少女。
魔王によって魔物の襲撃に合い、人々を守ろうと足止めをした少女。
二人の人間の真実が混ざって出来上がった偶像。
人にとって都合の悪い内容は全て魔物のせいに仕立て上げて――。
その村の中心に古ぼけた石碑がある。
『………』
『……』
人々が忘れたそれが女神にした元凶。
楔。
『ここに、わたくしの真名を使った呪物があります』
それがある限りあの司祭にとって都合のいい神に仕立て上げられるだろう。
『――で、わたくしを止めたい? 無理でしょう』
これがある限りわたくしは貴方達と協力する気にはならない。
『――壊せばいいの?』
今なら、勇者達を動かせる。
言外に告げてくる女神を見て。
『――なら、それをしてくれるのなら、この地を滅ぼう野を保留にしてあげる』
無理だろうけど。
そう馬鹿馬鹿しい賭けに出た。
その結果が――。
最良のモノになったのはすぐ後。
この村は魔王城から北東。
結界の再生のために欠かせない地域だった――。
滅ぼす事を辞めたわけじゃない




