突き付けられる現実
でもあんまりダメージ受けてない
第209話 突き付けられる現実
真緒が眠ったのを見て優しく柔らかく見つめ、寝台に運ぶ。
「――もう眠った」
だからいいぞ。
横柄に声を掛けると、
かちゃっ
ドアを開けて入ってくる者。
「お…お邪魔します……」
勇者の姿。
「そこらの椅子に座れ」
真緒の眠っている姿が見えない角度に置いてある椅子を指さして、自分は抹消面に真緒の姿が見える位置に椅子を構え座る。
「――何の用だ」
真緒様の安眠を妨害するような要件なら追い出すと言外に告げると、
「いや…、新庄さんの様子が心配だったから」
「問題ない」
眠っているのを見守りながら。
「お前の出る幕はない」
それだけならさっさと帰れ。
「……なあ、お前」
勇者が尋ねる。まだ話す事があったのか。
「新庄さんが元の世界に戻る時どうするんだ」
「……?」
意味が分からない。
「どういう事だ?」
「いや、新庄さんをそこまで心酔して新庄さんの為に動いて、生きて、……じゃあ、新庄さんが居なくなったらお前どうなるんだ?」
心配するような口調。だが、そこのは勇者の本音が見える。
お前と真緒は共に居られない――。
共に居られる。共に居る事が出来るからの余裕の台詞。
こちらを気遣っているように見せかけたこちらに対しての優位性を見せ付けている。
「………」
分かっている。理解している。
真緒はこの世界の住民ではない。
すでに魔族でもない。
「共に居られないのは理解している……」
はっきりと告げる。
「元々人と魔人だ寿命も違う」
「――魔人になった事を悔やんでるのか」
「まさか」
勇者の疑問に鼻で笑う。
「私が魔人になれたのは我が君…真緒様が呼んでくれたからだ。あの方に認識された。あの方に貰ったものだ。悔やんでどうする」
そう、全てがあの方のモノあの方がくれたもの。
「私は理解したくないが、分かる……」
独り占めにしたくて我が君を攫った事は許せない。だけど、そうしたいと思ってしまった気持ちも分かる。
「だからこそ、真緒様を守る」
汚していいものではない。
いずれ、異界の戻られるだろう。その時まで守る。
「…………難儀だな」
勇者が言ってくるが意味が分からない。
「そうでもない」
魔族は欲望の固まりだ。
「私は欲望に忠実だ」
真緒様の幸せ。その欲望を叶えるのがまず自分の幸せ。
それ以外の望んでない。
「……」
勇者は何か言おうとして口を閉ざした。
勇者(こいつ。ヤンデレ要素なのか献身愛なのかどっちだろう)




