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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
新たなる加護
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『バイバイ。またね』

きちんとお別れ

  第206話  『バイバイ。またね』

 ラーセルシェードの姿の彼女は、ラーセルシェードでは、浮かべない笑みを浮かべる。

「さてと、結界の張り直しをしましょう」

 そう告げると勇者の前に手を差し出す。


「――この身体を殺してください」

 ラシェルの言葉に、

「殺してって…」

 勇者が戸惑うのを見て、

「――私からもお願いするね」

 告げると、

「新庄さん…?」

 どういう事だと尋ねてくる姿に、

「……かつての私の身体は結界を新調するのに使うつもりだった。四肢をバラバラにして特定の場所埋める。そうするつもりだった」

 だから、

「――私を殺してください」

 ラシェルが告げる。

「でもっ!?」

 それって、

「ラシェルさんを殺す事じゃないのか!?」

 そうだ。今は、その身体にラシェルが居る。


 でも――、


「それが約束だから」

 お願いと言われた。

「――私の器をくれと言われた。……同化して別れたからきちんと死にたいと」

 死別。

 死に分かれは悲しくて重い。


「でも!?」

 泣きそうな勇者の声。

「でも、殺したくないんでしょ!!」

 そうだ。殺したくない。


「そんなの……」

「――ありがとう」

 気に掛けてくれて、

「でも」

「このままじゃ、――勇者の役割はこれでしょ」

 ラシェルと返すと、

「………それで、殺すのは俺だよ」

 以前なら殺すのに躊躇わなかった。だけど、今は知ってしまった。


 魔族にも心があり、魂が宿っている。

 ましてや今宿っているのは生贄として差し出され、その後人によって殺された人間。


「ごめんね……」

 酷な事をさせる。でも、

「勇者しか出来ないからね」

 勇者が勇者の剣で倒す。そうしないと魔族の――魔王の身体は倒せない。


「ホンと酷いよ」

 泣き出しそうだな。


「――魂の行き先をいいようにしとくよ」

 口を挟むのは冥王。

「冥王…」

「一応、死者に対しては僕の専門だからね」

 どこか面白がるような口調。


「借りを増やせるのは楽しいよ」

「――借りを作るのが怖いけどね」

 はぁ

 出るのは溜め息。


「――ごめんね。湯島君」

 謝るラシェル。

「……せっかく会えたのに」

 仲良くなろうと思ったのに。

「酷い事をしていたので今度こそと思ったのに……」

 もう間違えたくないと告げるその様は、まっすぐで、いろんな偏見が無ければ勇者として選ばれたのに納得いくものだった。

「ごめんね。ありがとう」

 申し訳なさそうに告げて、

「王様…」

                     ・・・・

「――私は今まで何人もの生贄と別れたけど、ラシェルの名を持つ者は特に忘れられないな」

 どちらのラシェルも私にとって大切な者。

「――ありがとう。王様」

 笑って告げて、だが、一瞬だけ、

「――王様。大事な者はもう無くさないでね」

 その視線の先にはリムクライン。

「ばっ…!?」

 この場に何を言っていると言い返そうとしたが、

「忘れないでね」

 真剣な眼差し。

「うっ、うん…」

 その眼差しに蹴落とされた。


 そして――。


 勇者の手によって、一人の王が倒れた。


 そこに居た人間は全て泣いていた。一つの終わり。

 その終わりが本来なら早すぎた終わりで、必要のない犠牲だったと真実を知ってしまったから特に。


――バイバイ。またね


 だけど、その犠牲となった少女は笑った。

 また合えると信じて――。


 …………だから自分のことよりも気に掛ける事があった。


――リムクライン。王様。彼は…


 伝えようと思って黙った真実。

 ……まだ、そうとは限らないと僅かな望みを抱いたからだった。

ラシェルの言いかけた事。後で分かります

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