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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
新たなる加護
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彼女との出会い

実は再会

  第203話  彼女との出会い

 ねばねばに包まれている様はまるで生まれたての赤ん坊の様だった。

 ………それを拭い去ろうと近付いて触れる寸前。


「――触れちゃダメ」


 止める声。

 その声の方をとっさに見ると――そこには、白銀の髪の魔人。


 いや――。


「魔王……」

 勇者が信じられないと呟く。

 だが、それは魔人達も勇者一行も同様だった。


 声を掛けたのはかつて勇者に倒された魔王ラーセルシェード――新庄真緒の前世の姿だ。

 …………すでに真実は知らされている。

 ラーセルシェードはすでに生きてはいない。生きてはいけない存在だ。


「……私は、獣の王様じゃないよ」

 ゆっくりとぎこちなく立ち上がる。


 まるで、今まで停止していた機械を動かすように。ゆっくりと慎重に動かしていく。


「でも、新庄真緒ではあるよ」

 ゆっくりゆっくり。

 勇者の前に立ち。

 怯えたように、震えつつ、

「新庄さん……」

 勇者が信じられないように呟く、

「勇者?」

「何を言って…?」

 意味が分からないと首を傾げる声がするが、

「新庄さんだよ。あちらの世界で、俺が近付くと逃げていた……」

 恥ずかしがって逃げていた。以前はそう解釈していた。でも、今は……。


「俺を怖がっていた新庄さんだ」

 認めたくないがそう告げると、

「うん…。酷い事されると思った。近付かれたくなかった」

 魔王の姿の新庄が答え、

「私はラシェル。神様と違うよ。……かつて生贄になり、自分の愚かさで死んだ。王様の傷」

 ラシェル?

 疑問を抱いたのが伝わったのかすぐに答えを与えられる。


「……その名前は我が君が、大事にしていた生贄の…かの女神の双子の片割れです」

 タイミングよく、リムクラインが答える。

 彼の女神……?


 すぐに女神ユスティが浮かぶ。

 それに気付いたのかリムクラインが頷く。

 ……………否定ばかりされていたから肯定されると嬉しさも一塩だ。

 悲しくない。悲しくないからね。


「………………さ………………ら?」

 ぼそりと、小さな声が聞こえる。

 さら?

 皿?

「いや、違うか」

 何で急に?

「えっと、ラシェルさん…?」

「――あっ、ごめんなさい。そうだよね。そんな訳ないよね」

 気にしないで、と手を振って、

「……うん。違う」

 何か自分を納得させるように呟いて、


「湯島君にお願いがあるの」

 そのために王様に頼んで体を借りた。そう告げる姿は何かを覚悟した者のそれ。

「……お願い?」

 何だろう。何か嫌な予感がする。

「――話したいけど、先に王様を助けて、王様必死に抵抗してるけど、たぶん苦しいから」

 苦しい?

「それは空気が吸えないとか…?」

「……それもあるけど。このねばねば、王様の精神を揺さぶって都合よく作り替える物なの」

 作り変える物って?

 あっ、なんかさっきから疑問ばかりだな。


「――分かりやすく言えば、赤ん坊を包んでいる羊水みたいなもの。真っ白な状態にして王様を自分のモノにしようとしてるから」

 その言葉にリムクラインの魔力が膨れ上がる。

 怒りを目に宿し、妬き尽くす勢いだ。

「――リム」

 アカネが声を掛ける。

「……分かっている」

 怒りを鎮めようと――冷静になろうとするリムクラインを見て、

「勇者。たぶんこれは勇者の剣じゃ無いと切れない。だけど…」

 真緒様に傷付けたら許さない。

 さっきの籠もった眼差し。

「――切らないよ」

 そう宣言して、

「だから八つ当たりしないでくれない。怖いから!!」

 叫ぶように告げて、ねばねばを勇者の剣で消滅させた。


 

勇者「珍しく活躍した。――そうだよな。勇者はこうじゃなくっちゃ」

リム「鬱陶しい!!」

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