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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
新たなる加護
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苛立ち

幾らでも苛立ってくれ

  第202話  苛立ち

 司祭は苛立っていた。

「新たな勇者を!!」

「魔物を倒すよ勇者を!!」

 騒ぐ神官達を冷めた目で見つつ、こんな輩を何とか出来ない役立たずの女神を見る。


 ――いや、役立たずではないな。

 神官達に見せ付けるが誰一人気付いてない。女神の仄暗い笑み。

 そう、それは――。


 何度も勇者を召喚して、勇者と言う存在を捨て駒にしてユスティ教を失墜させる魂胆。


 魔王を倒すための勇者が魔王に倒された。そこで信頼がガタ落ちするのに、それに合わせて次の勇者。勇者の証である勇者の剣を持たないのに勇者として呼ばれる。

 ――そんな存在は勇者であっても勇者ではない。

 すぐに魔族に倒されるだろう。そして民が不信感を抱いて行く。


 それ以前にこの者らは召喚をどう思っているのか。


「――落ち着きなさい」

 神官達を宥める。

「気持ちは分かります。ですが、真偽も確かめていないのにするのは愚策です」

 早く戻りたいのに、早く彼の君のために時間を使いたいのに。

「で、ですが…」

「――召喚はやすやすと行えません。前途ある若者が先の召喚でどれだけ犠牲になりましたっか?」

「…………」


 返って来るのは沈黙。


 召喚は莫大な魔力――この場合神の力と言っているが――を使用する。女神の加護があるからそれでも少ないが少なくとも次期神官候補数人が命を落とした。

 …………その危険性を神官達は知っていた。


 ――若者達は知らされてなかった。


 ………派閥争い。ユスティ様の身元では誰もが平等――そんな綺麗事を謳っているが人が集えば必ずそれは生まれる。

 清廉潔白の無欲の者であると言われている神官。その内情は肉欲、性欲。禁欲に溺れた者ばかり。

 糾弾されたら一巻の終わりだったので、糾弾しそうな心底神を崇拝している輩を世界の為と言う名目で都合よく処分した。


 一回や二回は誤魔化せるが、何度も繰り返したら危険性も感づかれる。


 そんな当然な事にも気付かないとは、

「真偽を確かめてから召喚をするか決めましょう」

 女神はまだその場に居る。

「では、私は戻り…」

―ーお待ちなさい

 鈴のような声。

 女神の声。

――この者らは判断するのに迷う子供。結論を傍らで見守っておやりなさい

 女神の言は正しい。だが、その本音は、

(彼の君から引き離すおつもりですか)

 忌々しい。

 偽者の女神が指図するか。


「…………そうですね」

 にこやかに内心不快なのを押し殺して、同意する。

――結論が決まったら手を貸しましょう

 それだけ告げると女神は消える。


 消えている間に殉教者を生み出して、奥の院に侵入させるつもりだろう。

 ――彼の君を殺す為に――。


(そんな事させて堪るか)

 早く結論を決めさせると息込んで話を進めさせた。 


その頃勇者達は…

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