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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
新たなる加護
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夢の中の語り合い

ねばねば洗脳空間で

  第199話  夢の中の語り合い

 ………消滅したと思っていた。

 いや、消滅したはずだ。


 一介の魂を魔王と呼ばれる存在しか入れない空間に入れてしまい、その結果の消滅。

 …………………ラーセルシェード(わたし)が殺してしまった子。


「ラシェル……」

 その名前を何度か喉に乗せたが、呼んでいたのは生贄の勇者と呼ばれる女神だけだった。


 もう、この子に向けて呼ぶ事はないと思っていた………。


『王様』

 いつも持ってきてくれた花よりも咲き誇っている笑みで呼んでくれる声。

 その声で呼びかけてくる。


「………………幻覚?」

 洗脳しようとしている空間。今は耐えられるかもしれないが限界は近い。――そこでこの幻。


 ………気が緩んだ隙に洗脳されたら掛かるだろうな。


『……王様が、魔族じゃなくなったから出てきたんだよ』

 ………幻でもいいか。こちらは警戒してるし。


 それに、……幻でも会いたかった。

 会えて嬉しいと感じてしまう心に嘘は付けない。


『………』

 ラシェルもそれは分かっているんだろう。余分な事は言わずに、ただ、

 ぴたり

 ……寄り添うだけ。


「……変わらないな」

 抱き寄せた感覚。あの頃はがりがりに痩せていたし、私の方も今はただの人間だから軽々と持ち上げれない――潰されるのがオチだ――。


『王様…。王様はどうしたい?』

 ぼろぼろの身体。肉付きは最後に見た時のままだけど、このぼろぼろ具合は見た事無かったな。

「どうしたいって?」

『王様は今何したい?』

 今か……。

「そうだな……。取り敢えず、私の意思を奪おうとする輩から逃げて、仕返しでもするかな」

 ああ、私の身体――ラーセルシェードの頃の――を回収して、結界の維持にでも使用するか。

 そう返すと、ラシェルは笑い。

『人間でもう少し居たい?』

 と聞いてくる。


「……」

 考えるのは一瞬。

「ああ」

 そして、返答。


 ラシェルは笑う。

 満足そうに――。


 そして、

『王様』

 その声がおねだりする時のモノに似ていた。


 いや、実際におねだりだった。


『王様の…』

 その内容に罠だと疑う心は当然あったが、それでも、


 それでも、

「――構わない」

 そう寛容に許しを与えていた。

次回は久しぶりに幕間の予定

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