至福の時間とそれを妨害する声
妨害大歓迎 by真緒様
第197話 至福の時間とそれを妨害する声
………呼ぶ声がする。
司祭――そう呼ばれている男は鬱陶しいとばかりに舌打ちをする。
その司祭はぶよぶよの――勇者が見ればスライムみたいだと的確な意見を述べただろう――半透明の人外の姿。
その内側には意識を失った黒髪の少女――。
司祭が欲しくてほしくて、欲しくて、手に入れる為だけにありとあらゆるものを動かした。
その目的の物が手には言った今。それに集中したいのにそれを阻害する声。
「………」
もう目的は達した。
手段として手に入れた地位などもう用済みだ。
呼ぶ声を完全無視しているがそのあまりにも切羽詰まった様子に、
「勇者でも動いたか…?」
と言う考えを抱く。
勇者と言っても正規の勇者ではない。
もう用済みなので消した方がいい――穏便に帰しても構わないが、再召喚と言う手段を取る者が現れたら厄介だ。
そういう意味ではまだこの地位を捨てるわけにはいかないと判断して、自分の身体からせっかく捕らえた手掌の珠を出して上質な寝台に横置いて寝かせる。
「――貴方は私のモノだ」
自分の中に入れていたので湿気っている身体を撫で、
「目が覚めたら貴方の世界には私しかいない」
――そう、怒りも憎しみも悲しみも喜びも愛もすべてすべて自分一人に向けられるモノ。
洗脳など気が進まないが、かつての自分を一瞬でも知っている素振りをした。
・・
…………あれを記憶してもらいたくない。
あんな過去の汚物。汚点。
自分を見てもらうのにあんな出来損ないの姿は見てもらう必要などない。
「――待っててくださいね」
身体の中に入れたまま人の姿に偽装できない自分の力無さに嘆きつつ、人の姿に化ける。
「――どうした?」
奥の院と呼ばれる彼の君の為だけに用意した世界を出るとそこには神官達の姿。
「司祭様。良かった!!」
奥の院は司祭以外に入れない。
そう言う不文律を作り上げたので外から呼び続けるしかなかった神官が安堵したようにこちらを見てくる。
「瞑想の時間をお邪魔して申し訳ありません」
頭を下げてくる神官に全くだと――彼の君の為の時間を邪魔した事を責めてて体がそれをおくびにも出さずに、
「――何かありましたか?」
と、穏やかな清廉潔白の仮面を被る。
「実は……」
神官から告げれれたのは勇者を召喚した時から付けていた勇者の動向を見張っていた術が消滅したという事だ。
表向きは常に勇者の援助できるように――。
本来の目的は勇者がこちらの意にそぐわない事をしないための監視――。
前回の償還時はそれのおかげですぐに彼の君の器を回収できた――だが、魂を逃してしまった――今回もそれを使用していたが――まさか一緒に召喚された小娘が探していた彼の君だと気付いてなかった――それが消えるとなると――。
「消える直前の勇者の動きは把握してますか?」
そう、勇者が彼の君と接触してその場の空間が繋がりやすくなったのを見計らってその場に現れたのだ。その時には傀儡である勇者は自分が人形であるのを自覚無しでその場に居た。
そこから変化は無い筈だ。
「それが……」
神官達が報告する内容は――。
彼の君を手に入れた直後に勇者に掛けていた術に乱れが生じて、それが完全に切れたとの事だった。
真緒「うぅ……」
ネバネバが気持ち悪くて魘され中




