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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
新たなる加護
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現実逃避

巫女さんの脳内ピンク色

  第193話  現実逃避

 夢の中では自分の理想が広がる――。


『巫女……いや、リジー!!』

 顔を赤らめた勇者が巫女の手を取る。


『だ、ダメです。勇者!!』

 わたくし達は世界を救う使命があるのに――。そう抵抗するが、形ばかり。とても抵抗とはいえる物ではない。

『リジー。俺は……』

 切なそうに揺れる瞳。

『俺は、世界よりも……』

 君だけを守る勇者になりたい。

 耳元でささやかれる言葉。

 その言葉が抵抗を奪う。


『勇者……!?』

 巫女の目から涙が零れる。

『……嬉しい…………』

 本音がポツリと零れる。


 りんご~ん


 舞台が変わり結婚式。

 勇者を巡る戦いの敗北者――女騎士と魔法少女がハンカチを噛んで悔しそうにしているのを優越感と共に勇者の腕に自分の手を回す。


 勇者と共に人生を歩く事を神に誓う。なんて幸福なんだろう。 

 二人で神殿を進んでいく。

 神殿の奥には司祭とユスティ様の石像が置かれている。そこで互いの誓いをするのだと喜び勇んで向かう。


 だが―――。


 歩いても歩いても神殿の奥にユスティ様の石像に辿り着かない。

 こんなに遠かっただろうか。こんなに歩くのが遅かっただろうか……。

『ゆう…』

 助けを求めるように腕を掴んでいた勇者に視線を向け、名を呼ぼうとした。


『――貴方の信じる神はどこに居るの?』


 降ってくる声。

 無限に続くように感じた神殿の奥に辿り着く。

 そこにはユスティ様の石像の上に座っている司祭の姿。


『司祭様!!』

 神を…ユスティ様に触れるのは余程の事ではないと許されない。ましてやその石像の上に座っているなど――。


『司祭様何を……』

 しているんですか。そう尋ねようとする声が動かない。

 身体の自由が利かない。

 

『――ようやく手に入った』

 司祭は笑う。常に信者を――神殿関係者をまとめていた最高権力者の手には一人の少女。


『私の神』

 ユスティ様の石像を足蹴にして、愛おしげに少女に触れる。


 少女は青褪め、怯え、震えている。

 逃げようとしているが、

『――逃げてはだめですよ』

 

 巫女の手には勇者の温もりがあったのに勇者は消えている。

 あるのは冷たい刃物の感触。


『逃げたらどうなるんでしょうね』

 首元に痛みが生まれる。

 身体が動かない。

 逃げたいのに逃げれない。


 目の前にはそんな状態を楽しそうに見つめている司祭。

 大きく目を開き、こちらを案じている黒髪の少女。


 司祭様。

 どうして。

 助けて下さい。

 司祭様。

 ユスティ様。


『貴方の神はどこにいるんですか?』

 楽しげに司祭は笑う。


『貴方の信じている神なんて居ないのに』

 神は……居ない――。


 暗転。


『巫女と名乗っていたのに、神じゃない存在に祈っていたのね』

 それってあたしとどう違うの。

 魔法少女が目の前に現れて馬鹿にするように見下してくる。


『神の力で補助していると常に言っていたが信仰が弱まると足手纏いだな』

 女騎士が冷たく突き放す。


『わたくしの方が巫女の称号に相応しいですね』

 精霊王に見出された王女がくすくすと笑っている。


『……』

 勇者がこちらを見ている。

『ゆう……』

『触るな』

 手を伸ばしていたのが止まる。

『ただのリジーには用が無い』

 一刀両断。


『勇者…』

 呼ぶが勇者は振り返らない。

 勇者と共に魔法少女が。

 女騎士が。

 王女が去っていく。


『勇者!!』

 必死に追いかけようとするが、

『駄目だよ』

 声。

『君はここで私の神の為の生贄になってもらうから』

 司祭の声。

 その手には司祭に命を握られた少女。


 助けを求めるように瞳を揺らすが。

 それも一瞬。


 ――巫女を守るために司祭に好きなようにさせている姿が目に入った。



巫女「起きたくないでござる」

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