魔人と人の隔たり
魔人組は勇者が嫌い
第186話 魔人と人の隔たり
かくかくしかしか
勇者が女騎士に説明――ちなみのまだ巫女は起きてこない――女騎士も名の束縛されていた時の事を話し出す。
「巫女は……?」
「――分からない。女騎士みたいに起こせればいいけど。女騎士と違って、神の力が強くて出来ないと」
案じる声。
「……巫女」
いくら勇者を巡ってのライバルでも同じ旅を続けてきた仲間だ――新庄と違い――気に掛けるのも当然だった。
「――クー。真緒様は?」
人型のクーにリムクラインが尋ねる。アカネも当然聞いている。
「……」
「眠らされているか……」
「リム。ありゅじが眠らされて操られたりゃどうしよう」
不安げにリムクラインを見上げるアカネ。
「今のありゅじ。ちかりゃないんだよ!!」
「――ああ。分かってる」
さっき暴走するリムクラインを抑えたアカネだが、さすがに現状を聞いて不安になったのか泣きそうになっている。
「………」
クーがそんなアカネの手を引っ張る。
「……」
クーは声が出ない。声帯を持っていない。だが、魔族同士――ましてや真緒の力でによって生まれた存在だ同じ真緒に忠誠を誓う者同士意思の疎通は優れている。
「そうか……分かった」
魔人同士で分かりあっているが、この場にいる人間。魔王。神には点で理解できない。
「えっと、何が分かったの?」
どう声を掛けよう。と、迷いつつ声を掛けた勇者だが、
「……」
「………」
「……」
冷ややかな視線を魔人三人は勇者に向けて、
「で、クー」
「ありゅじは」
とまるっきり無視をする。
「無視かよ!!」
勇者が避難するように叫ぶが、魔人三人は相手をしない。時間の無駄だと言う様に。
『彼女がどうしたのかのぅ?』
――獣の王は無事?
「怪我はしてない?」
精霊王。生贄の勇者。冥王。三者三様の問い掛けに。
「異変があったらクーが分かるそうです」
「クーはまだ。ありゅじの腕に足を置いてありゅって!!」
「俺の時とえらい違いだな!!」
何その贔屓。文句を言う勇者だが、
「足って?」
「クーは戦闘能力は無いけど隠密能力に特化してりゅ」
「真緒様の腕に常に絡みついて情報を真緒様に送っていました」
勇者の叫びは完全に無視して、冥王の疑問に答える。
「《水琴》………」
何となく理由が分かった魔法少女が自分の傍らに居る龍にお願いする。
「はあ…」
お願いの内容に気付いて、大変そうだなと呟く。
「”彼の君の直属の部下の方々”」
あえて、旧文明の言語。
「”人が情報の共有がしたいので問い掛けに答えてほしいと”」
なので相手にしてくれませんか後が面倒なので、と伝えると、魔人三人が龍の方を見て、
「”我らが相手にする価値は無い。他の魔王様や生贄の神は敬意を払うべきですが”」
「”それはそうだけど、一応協力者。ですから……”」
そこで舌打ち。
「”真緒様に非道な行いをした輩と口を聞くのも億劫だ”」
(億劫まで言っちゃうんだ)
(旧文明の言語で良かったな)
周りで聞いていた旧文明の言語が分かる者達――と言うかそちらの方が使用している言語――は魔人達の話を聞いて内心面白がって野次馬化している。
説得するのを手伝って下さいと目で訴えている龍を助ける気などさらさらない。
どうすればいいのかとかなり困っている龍を見て。
「――力を貸してほしい」
何を思ったのか勇者は突然頭を下げた。
な…何が起きた…。
ざわ…ざわ……




