冥王の加護
昨日の内に投稿したかった。(´;ω;`)
第185話 冥王の加護
女騎士の意識に流れてくる記憶。
それは、冥王の人間だった頃の戦いのモノ。
自分と異なる戦場。
自分と違う立場。
だけど、生きたいと足掻いていた。
死に一番近い魔の王が誰よりも生に執着しての魔王化。
何と言う皮肉だろう。
『ボクは気にしてないけどね』
死すら超えたモノ。
『生きたいと願うのは自然原理だし。ボクはある意味戦いに勝ったんだし』
だけど、だからと言っていきたいと願う他の人間の事は何とも思わない。
死は平等。
死と言うモノに敗者も勝者も弱者も強者も居ない。皆等しく迎え、誰一人逃れられない。
『でもね。強者だからと言う理由で延命しようとするのは不快なんだよね』
薬を買える者買えない者。
同じ病なのに、薬がある無しで明暗を分ける。
貧しいと言うだけで助からないのを彼は見てきた。
命の価値は同格であると神は謳っているのにならどうして環境で差が出来る。
戦いならいい。一対一。最後に生きたいという想いが勝者と敗者を分ける。
だけど、それ以外の死は納得いかない。
圧倒的強者になった自分に言えた義理ではないが。
そんな自分達でさえ、条件が重なれば滅ぼされる立場だと判断している。
かつて、魔王を倒した立場である勝者でありながらそれに悔やむのも気に入らない。
たがいになったくしたのだ。魔王――獣の王も。彼(彼女?)が納得いかないのはまだ自分の死が早かった事。そして、その後の自分の治めていた地で起きた騒動。それが何者かがあえて起こした事だった事。
『ボクはね。死すら掌に操れるけど、万能じゃない。事が来れば勇者に倒される立場だよ。だけどね』
ならばそれまで好き勝手に生きる。
『自分のした事を悔やむなんて愚の骨頂。ましてや今の君は何もせずに安直な自死に向かってる』
冥王が――死を支配する王は笑う。
『それはボクに対する冒涜だよ』
だから――。
『加護(罰)を与えてあげる』
強制。
『君の勇者のために戦える力をあげる』
もう名の支配を受けないよ。せいぜいボクを楽しませてね。
叩き起こす。
眠りに逃げようとしていたのを許さない断罪の術。
そして――。
「ローゼル!!」
目の前にはこちらを案じて叫ぶ勇者。
「勇者……」
勇者の友人――想い人では無い筈だ――を捕らえるのに協力した。自分の死を人質に彼女の自由を奪っていた。
自分の意志でしていないが、自分のしあことは勇者に責められる代物だ。
………………勇者に責めれれたくない。断罪をしてもらいたい。だけど、勇者と言う存在に否定されたくない。
そんな想いが眠りと言う卑怯な逃げ方をしたんだと突き付けられる。
「勇者……あたしは」
謝らないと、謝って、
ぎゅっ
「無事で良かった……」
抱き付かれる。その温もり。重み。
「お帰り。女騎士」
「ああ……」
ただいま。
答える声が震えない様に抑え、それだけしか返せなかった。
こうして加護と言う名の罪を与えられました。めでたしめでたし




