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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
三人目の魔王候補
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冥王

本編関係ないけどなぜか出来た

  第184話  冥王

 死に近い場所に居て、死を諦めない者。

 そういう存在を冥王は気に入る。


 大なり小なり人は死を考えて、自分を死の外にあると無意識に思っている。

 死後の世界と言うのもそう言うものだ。


 冥王はかつて人だった。


 魔族と言うのは条件さえ満たせば魔族になれる。

 ある一匹の狼が自分と異なる種族を理解したいと欲を抱いた時。

 ある植物が、自分自身で、増えるために進化を求めた時。

 ある龍が、その高い空をどこまでも羽ばたきたいと臨んだ時。


 ――ある人間が不治の病でも生きたいと足掻いた時。


 少年はそこそこの名家の次男に生まれた。

 貧しくない程度。かといって贅沢出来る程でもなく、平凡な生活。学校は金持ちしか通えないのでせいぜい手に職を持って独立をするんだなと思っていたぐらい。


 そんな少年がある日。激しい痛みで倒れた。


 両親は慌てて後継ぎである長男に移るといけないので隔離させた。

 その段階では、彼はそれは当然と受け入れていた。

 そこそこの家だから跡取りは大事。その下は跡取りが何かあった時の予備なのを理解していたから。

 

 掘っ立て小屋。医者は呼ばれたが、医者にもピンからキリがある。

 移ったら困るからと隔離されたところで医者にある程度金を渡して診に来ない親。

 医者はその環境を利用してもらった金で酒を買い、少年を治療しようとしなかった。


「……」

 少年は学校こそ行ってなかったが後の事を考えて文字の読み書きは出来ていた。医者が建前の為に持ってきた医学者に目を通し、客観的に自分の症状を判断して、自分の病が体を内側から腐らせていく最近流行している不治の病だと気付いた。

 気付いて、最初にしたのは医者の持ってきた物を調べる事だった。

 病は完治しない。それでも進行は遅らせる事は出来る。

 荷物を漁り、その中から該当する薬を見付けて、医者の処方もなく口にする。


 何も処置されてない。ただ死を待つだけ――それならばどんな無茶でもしてみようと思ったのだ。


 それだけ、生に執着していた。


 素人の見様見真似の治療。止める立場の者は誰一人近付かないからこそできた荒業。

 それが聞いたのか不明だが、少年は生きた。

 

 離れに持ってきてくれるはずの食事もなく、診察してくれる医師も来ない。


 家族一人来ない孤独の世界を一人で生きて生きて――。


 身体は腐り落ちてきた。動くたびに骨が悲鳴をあげる。

 生きているのが不思議な状態――動く腐乱死体。そんな状態でも生きた。


 そんな醜いと言われてもおかしくない姿が自分の戦いでの成果。死んでもおかしくないのに生きている証。


 それでも終わりが来る。


 ただし、その終わりは戦いに敗れてくる――死ではなかった。


 離れの扉が急に開かれた。

 人が来なくなって重くなった扉を苦戦して開ける音。

『……?』

 珍しいな。最初はそう思った。だが、

『化け物!!』

 金切り声が響き、見た事の無い女性が悲鳴をあげる。

 その女性の近くには父より若い。父に――兄に似た人物。


『死霊か。ゾンビか!!』

 喚く声。


 そのヒステリックの声は兄の言い方に似ている。

 今、何時なのか……?

 あれからどれくらいたった………。

『病で死んだと思っていたのに化け物になって、我が家の面汚しが!!』

 叫ぶ声。


 自分は……。

「ああ。そうか」


 生きたい。生きたい。

 それはヒトを超えた欲だったのか。


 なら、自分はすでに人ではない。


「生きたいと言うのは罪なのか」

 なら神とは相容れないな。

 そう思って彼は――ようやく自覚した冥王は楽しげに笑う。

 悲しみをどこか宿していたのは隔離していたのを忘れていたのだろうと言うのがその侵入者の動きで判断したのだ。

 その笑みは、死を誘う。

 

 ――その地域の住民が発狂して死んでいったのは、冥王の起こした惨劇。

 誰か一人でも彼の苦しみに寄り添えていれば起きなかったかもしれない悲劇だった。

冥王と言えば、スレ●ヤーズのショタとかハーメ●ンのリュートの手に乗せられてる頭とかが浮かぶな。

後、せつなさん。

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