人間たちの憶測(その1)
まだハーレムの中に取り込まれていません。
落ち着け、私の正体はばれてない。
「どうしてまた召喚を? 新庄さんまで!?」
勇者は召喚陣を囲んでいた中で一番偉い人――私の前世の記憶を覗いたらとある大国の王だった――に訪ねている。
ああ、勇者に倒された時に手元に置いていた生贄の父親だったな。
うん。あの王女は面倒だった。(遠い目)
傾国とか三国一の美姫とか言われてたけど、自分より格下だと判断すると見下し、いびり、表向きは慈悲深いと言われてたけど、召使の大切な物を奪い、壊し、嘲笑い、そして、生贄を金で買った人間で仕立てあげようとしていた。(まあ、無理だけど)
魔王城でも我儘言って、部下が苦情言ってたな。
………てか、なんで生贄を要求してたっけ?
死んだショックかな。記憶がかなり虫食い状態だ。
今困ってないからいいけど……。
「もしかして……。魔王が復活したとか…」
恐る恐る最悪の事態を口にするが、それはないと魔王本人が断言しとこう。(やぶ蛇になるから言わないけど)
「いえ…、それはありません」
だよね。それにしても相手が勇者だからか丁寧に話すな。
「ですが…」
ちらっ。
意味深にこちらに視線を向けている。まるでごみでも見るように――。
「新庄さんがどうしたのです。ってか、何で彼女まで…」
おい!! お前の彼女発言に未だにくっ付いている三人+離れたところにいる傾国の美姫(笑い)の殺気が増しただろう。ってか、まだ上限にいってないのか…。
「いえ…。先回と同じ方法で召喚しましたが、経験者が多かったからか慣れもあり、勇者様だけではなく…」
余分なものまでという呟きは幸いなのか故意なのか。勇者には聞こえていない。
「勇者様。詳し説明はしますが、ですが…」
はい。部外者に聞かれたくないですね。分かります。
「湯島くん。私は席を外すよ」
「えっ!? でも、新庄さんを一人にするなんて…」
空気を読んだのか。読んでないのか。
もし読んでの発言だったらここの人々が巻き込まれただけの私を快く思ってないのに気付いた事になり、読んでないとしたら私の立場というか、身上が悪くなる事になる。
……新庄なだけに身上が悪くなる。
うん。くだらないね。
でも、正直ギャグでも言ってないとこの空気に置かれるのはきつい。
少しは空気を読んでくれ。
このまま、ここに居たら殺気だけで殺されそうだからさ。
「ここに居たらずっと話してくれないと思うし、…少し一人にさせて」
冷静に考えたい事もある。
「……分かった」
流石に空気を読んでくれた。
「新庄さんの身は保障してくれますか?」
おっ、勇者らしいな今のは。
「我が名にかけて」
王の誓いを聞いた事でようやく話が進むみたいだった。
王様の長い話(?)は次です。サブタイトル偽りありだな