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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
三人目の魔王候補
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女騎士と冥王

女騎士はハーレムの中では影が薄い

  第183話  女騎士と冥王

 身体が重しになったようだった。


 常に死の最前線。

 戦場で身を置き、死にたくないから腕を磨き、強くなり。

 ……………気が付いたら国一番の騎士の称号を得た。


 だが、その栄誉は喜ばしいモノとは言えなかった。


 騎士は男女問わず門が開かれている。

 女性の要人を守るのに女性の方が向いている場面も多々あり、どちらかと言うのは無いのだが、やはり騎士は男と言う印象が強く女騎士の出番は少なかった。

 それなのに国一番の栄誉。


 女のくせにという暴言は日常茶飯事。

 色事で手に入れたのだろうと馬鹿にされ。

 女と言うだけで思い通りにしようとする輩。


 女、女、女。


 女と言うだけで舐められる。

 女と言うだけで正当に評価されても媚びたと言われる。


 そんな日々に正直参っていた。


『女騎士さんは凄いですね』

 そんな中の勇者の教育係だ。

 内心警戒した。

 女に教わるのかと言われるのを。

 だけど、第一声はそれだった。


『……女に教わるのは気にしないのか?』

『えっ? だって国一番の騎士でしょう?』

 不思議そうに聞かれ。

『俺の国には、霊長類最強の女性と言う人がいるんですよ。直接は会った事ないけど』

 れいちょうるい?

 それは分からないが人類最強だと言われて、異世界にもそんな女性が居るのだと驚き、励まされる。


 そして、異界から着た青年は女だからと言う言葉から解放してくれた。

 女である事が辛かった。どんなに努力をして、どんなに強くなっても女だからと言う言葉が正当性を奪い、何かあると女のくせに。馬鹿にする時は女だからな。それで自分自身を否定しそうになった。

 ………勇者は恩人だ。


『――そっか。それが君が勇者にこだわる訳なんだ』

 声が降ってくる。


『誰!?』

 慌てて声の方を見るとそこのは一人の少年。

「君に加護を与えるには君の深層心理に潜った方がやりやすいからね」

 くすくすと少年は笑う。

『何者っ!?』

 女騎士が剣を構える。

『え~。どうしようかな~』

 普通に名乗るのはつまらないし。もう少しいじってみたいし。

 人を馬鹿にしているのかと剣を向けようとして、相手は子供――本当に子供とは言えないが――だ冷静になれ。

 そう言い聞かせると、

『――冷静さは次の動きを増やす。うん、評価できるね』

 でも、

 ぱちん


『起きて。起きて。女騎士。ローゼル!!』

 必死に揺さぶっている勇者。

『呼んでるよ。起きないの?』

 尋ねられるが、

『無理だ……あたしは勇者に合わせる顔が無い』

『それは、こういう事?』

 無邪気に笑っているようで――獲物をいたぶる猫のように目を輝かせて――ぱちんと指を鳴らす。


 目の前に刃物。

 自分の意思を逆らって動く腕。

 喉に当たる冷たい感覚。

 

 常に戦場に居た。

 常に戦っていた。

 死も覚悟していた。

 だけど、その死が自死と言う形。しかも操られてなんて覚悟してない。

 しかも――。


 映像が切り替わる。

 必死に恐怖と戦いながら助けようとする少女。

 橋から落ちた子だった。

 助ければ間に合ったかもしれないが、助けなかった。


 勇者が気に掛けていたと言う時点で相手にしたくないと思ったのだ。

 死んだと思った時内心安堵していた。完全な邪魔者を処分できたと。

 だけど、そこまでしたのに彼女はこっちを助けようとする。

 気付いているのに。

 分かっている筈なのに――。


『お人好しだからね』

 困った様に――実際は困ってない――告げる少年を見て。

 ・・

『あれは気にしないでいいよ。そう言うものだから』

 そう言うものって、

『あっ、名乗ってなかったね。ボクは冥府の番人。友人たちは僕を冥王と呼ぶよ』

 ずっと聞いていた時は答えないで、今になると答える。

 外見子供のくせに曲者だ。


『――で、君は死にたいの?』

 にこにこと笑って尋ねてくる。

『死にたい……』

 そんなつもりはない。はずだ。

 でも――。


『責任取るのならその方がいいのだろうか……』

 このまま勇者の足を引っ張るくらいなら。


『馬鹿馬鹿しい』

 呆れた声。

『死にたくないの抵抗したのに、今更死を求めるなんて甘い考えはやめたら』

 少年――冥王の身体がゆっくりと腐っていく。


『生きたいのに死んだ方がいいと思うのは逃げてるようなものだよ』

 生きたかった者は多く居るのに。

 冥王と言う死を管理する者が言うのしては違和感を覚える発言を彼はしていた。


次回冥王の過去話。

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