精霊王と王女
精霊王が妖艶美女のままだ。
第182話 精霊王と王女
「精霊王様」
王女が冥王に視線を送りながら尋ねてくる。
『どうした?』
「加護の話ですが……」
冥王が無理でも精霊王なら出来るのでは……?
期待しての発言だろうが、
『無理じゃな』
早々に否定する。
『わらわは……いや、魔王が与えられる加護は最低でも二人じゃ。勇者の加護を与える分もう余力はない』
すでに精霊王の巫女と言う加護を得ている王女に諭すように告げると、自分が加護を得ているから何も言えなくなる。
『それにしても珍しいのぅ。そなたが気に掛けるなど』
何を考えての事じゃ。
尋ねると、王女は迷い。目を伏せて。
「世界が崩壊するのは体験したので………」
『なるほど…』
傾国の美女と言われその日々を謳歌していた立場から一転。生贄として魔王城に送られた。
そこでの生活はどの様なものか分からないが、旧文明の言語であった魔族と話す事は出来ず。恐怖の対象故交流を図ろうとしなかっただろう。
………………獣の王も言語が変わった時点で何らかの手を打っておけば勇者が現れるのを防げたのに――。
そして、無事に勇者によって救出されたが歓迎されなかった。
魔族の――この場合魔物か――元から返ってきた王女を腫れ物のように扱う者。それはまだいい。魔王によって手を出された。魔王の手が付いた。汚された。
…………そのような噂で彼女は恐れられ怯えられた。
傷付いて弱った心を助けてくれる『帰る場所』は安息を与えてくれる場所ではなかった。
……………勇者が捕らわれていた女性と幸せになりましたと言う物語が多いのは勇者自身と心を通わせたからと言うのもあるが、『勇者』がその無事に帰った生贄の『身』も『心』も無事だと伝える手っ取り早い方法。
勇者の妻ならば安全。
勇者が手を出して、『安全』だと保証させてから降嫁させると言う方法も取れる。
だけど、王女はしてもらえず、いらない者として放置された。
精霊王の巫女。加護を得たという事で彼女は魔王に汚された生贄ではなく、魔王に囚われても汚されなかった高潔の王女と言う立場になった。
(人と言うのは愚かじゃのう)
呆れてしまうが、弱い者の定めと思えば納得も出来る。
『冥王は死に近い者。死を間近で感じる者は気に入る。加護も当然じゃが、他者に崇拝している者には手を出せない』
ユスティ教。それを崇めて崇拝している巫女。そして自分を名の束縛で縛ったユスティ教の教祖様。
『世界の崩壊的ではこの者の方が強いが手を出せぬ』
だから、
『本人の気力じゃな』
ここで期待するのは。
…………そんな話をしていた矢先。
女騎士が目を開けた。
精霊王の好み。
綺麗な子。(見た目。魂の質などなど)




