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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
三人目の魔王候補
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命令実行

もふもふじゃないけど癒し

  第179話  命令実行

 ぴょこん

 それは動き出す。


 それは、情報を常に探っていた。


 最少は王城。人間達の動きを。


 次は勇者。魔王化したのを案じた彼の主の命で。


 常に探っていた。異変が起きたら報告してきた。


 そして、主はそれを作る時にその存在を固定した。

 宙を漂い、宙に溶け、誰も探れない存在。


 そう――。


 どんな者でもそれに気付ける者はいない。


 だから――。


「………」

 それは、宙に漂っている姿だと任務に支障が出ると判断した。

 それは、主がついそうなったらいいなと思った事を忠実に再現した。


 水色のふわふわの髪の毛。

 愛らしい子供の姿。

 大きな瞳は透明に近い青。

 

 無力な人の姿を取っても誰もそれに気付けない。そういう属性故。邪魔者は居ない。


「………」

 それは目的の物を見付ける。

 主の足を引っ張っている人質。


 人形のように意思を奪われて物置としか呼べない所に無造作に置かれている。

 おそらく、もう意味を持たないのだろう。主を捕らえる為だけに利用して、主の意思を奪った今。残しておく意味は無い。

 かといって、元あった場所に返すなんて事はしない。


 それ――クーはじっと調べる。


 罠があるかもしれない。僅かな違和感も見逃さない。そういう能力を持っている。

「………」

 使い捨ての道具にいちいちそんな仕組みをしないのだろう。何もされてない。名の束縛で動きを操れると言う慢心だろうか。

 それとも、主が言っていた『高位の者』が面白くするためにあえて放置させたのかもしれない。

 ――もしそれだったらいくらクーでも分からない。


 そんな『もしも』を考えていてもりがない。

「………」

 二人――巫女と女騎士は気を失っている。起こした方がいいか。

 ……騒がれると面倒だからこのままにしておくか。


 自分の足で動いてもらうメリットを取るべきか。静かに行動を移せるメリットを取るべきか悩み――長くは悩まない。時間もないので――起こす時間も勿体無いと判断して二人を担ぐ。


 人間の姿をしているままで誰一人視覚として認識できないが、見えない複数の足が二人を包んで運んでいる。


 くいっ

 勇者に張り付けた足を引っ張る。


 ――まだ付いている。


 そう認識するとその足を通してこの地から脱出して去る事が出来る。


 主。


 声帯を持たないので声を出せないが、捕らわれの主に呼び掛ける。


 気を失っているので返事は来ない。

 ……命令に変更はない。


 主の命を思い出す。

――足を残したまま女騎士と巫女を勇者の元に連れて逃げなさい

 足を残したまま。

 …………足だけしか残してはいけない。


 危険な状態だからこそお傍に居たいのにそれを許されない。リムクラインやアカネみたいな戦闘力が無いので足手纏いにしかならないのは理解しているが、それでも盾ぐらいならなれると言いたかった。

 盾になって死んでも自分は本望だが、主は悲しむ。

 

 命令違反はしたくない。出来ない。

 だからこそ。足をしっかり残して、主をすぐにでも助けられる言葉通り足掛かりになる決意を胸に宿した。


さてと勇者のターンに戻りますか

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