傀儡の勇者 その1
ハーレムのメンバーが変わっている件
第172話 傀儡の勇者 その1
ユスティ様を見た事あるから、その女性が人ではないのに気付いた。
……ユスティ様と同じ存在。
「神。ですか……」
ユスティ様が偽りの神と呼ばれていたから本物なのか分からない。
いや、そもそも神の本物とか偽者などあるのが不思議なのだが――。
――私は、生贄の勇者
その声に、どういう事だろうと首を傾げると、
「……結界を作った功労者です」
『その方らが侵略されずに今日まで平和を甘受しておられたのもこの神のおかげじゃな』
末っ子が、精霊王が魔法少女と王女――それぞれ自分が守護している存在に教える。
「生贄の勇者……」
そう言えばあの子の地の記憶にあった。魔王に――獣の王に懇願して結界を作ってもらっていた勇者の姿が。
――勇者としては貴方の先輩になるかな
「俺は…」
知らなかったとはいえ、その貴方の功績を無駄にしてしまった。
結界を破壊するのに一役買ってしまって、女神だと崇めていた存在が真実の女神ではないのを知らなかった。
――彼の者も一応は神の人柱。高位の者だ。完全な偽りとも言えないけど
生贄の勇者の説明の意味が分からない。
「あの……」
――神として仕立て上げられたと言う時点では神と呼べるだろう。生まれが特殊だから神としては弱く。偽りの神と言われても仕方ないが
「……?」
「意味分かりませ~ん」
「精霊王様は分かりますか?」
人間三人の疑問だらけな反応。
『……彼の者も神なのか?』
「……親爺様の進化形だと考えると弱いのですが………」
意外だとばかりに人外二人が反応する。
「生贄の神」
回復に勤しんでいた山羊の魔人が口を開く。
「我が君……真緒様の名をあの者は口に出来なかったのは我が君の方が力の質として強いからではないか?」
何で、魔人が新庄さんの名前を口にしているんだろう。名の束縛があるのに新庄さん名乗ったんじゃ……。
名の束縛の知識を教えて無かった事を悔やむと――本人は知っていたが許したとはまさか思ってない――その事実に気付いている人外――女神、魔人、精霊王の事――は生暖かい目で勇者を見て。
――ラーセルシェ-ド。あいつがかの女神に呪いを掛けたからな。――不幸になれと。その呪いが解けてない事実からすればかの女神はラーセルシェードよりも格下という事だ
生贄の勇者の言葉に魔人二人がそうだろう私達の主は凄いだろうとドヤッてる。
―ーで、後輩
勇者としての後輩だと言う意味だとニュアンスで伝わる。
「……俺は勇者じゃないですよ」
自棄になったのでは無く事実だ。勇者として召喚こそされたが勇者として行ったのは平和を壊した事だ。
「勇者……」
「勇者様……」
魔法少女と王女が心配そうに勇者を見つめる――どちらも勇者を異性として意識しているので内心勇者に寄り添って得点稼ぎが出来ると思っているが、それはさておき――。
――魔王を倒したのに勇者じゃないと言うのか。まあ、完全に倒してないからその考えは正しいのかもしれないな
楽しそうに笑うと、
――さて、種明かしでもしようかな
面白がるように告げて、
「種明かし……?」
まだ何かあったのかと警戒してしまう。
何分。勇者として煽てられて魔王を倒したのに、再び召喚されるは魔王を倒さない方が治安がいいわ。崇めていた女神は偽者だったとかいろんな事が重なってしまうと警戒しても仕方ないだろう。
――お前の倒した魔王だけど、転生して人間として過ごしていたけど
あっさりと告げられる事実。
「――酷いな」
そこの新たな声。
「僕がそのネタをばらして、勇者をいじめようと思っていたのに」
宙に浮かぶ腐乱死体――としか見えない――が不気味に笑い――ハロウィンコスですよね――そう告げてくる。
『おやまあ』
「近隣の魔王集合ですね。――僕は代理ですが」
魔王?
警戒して構えるこちらを見て、
「ひっどいな。僕は魔王じゃなくて、冥府の番人だよ」
『――阿呆が、呼ばれ方こそそれぞれだが、そなたも魔王であろう。冥王』
えっと、魔王? 冥王? 冥府の番人?
「魔王と言うのは魔族でも最高位の名称です。そして、魔王にはそれぞれ呼ばれ方があって、龍帝。精霊王。冥王。獣の王。それらは全て、魔王の二つ名だと思って下さい」
龍帝の息子の説明。
「……つまり、役職は部長。正確には、経理とか人事とかが付くような感じかな」
「………………すみません。意味が分からないのですが」
分かりやすくしようとしたらそんなダメ出しが来た。
勇者は部長で表現したけど、魔王達からすれば、足利将軍とか徳川将軍のようなもの。




