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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
三人目の魔王候補
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告白合戦

本当は別のタイトルを使用したかったけど次回で

  第170話  告白合戦

 目の前の光景が信じられなかった。

「新庄さん………」

 魔王として――正式には魔王と名乗ってないが――現れた新庄にも驚いたが、

「リジー………」

 いつも笑顔で支えてくれた。姉のような、母の様な慈愛で、時折過保護さ故に暴走していたが常に神と民の為に動いていた――最近は不安定だったが――巫女の名を呼び。

「ローゼル………」

 厳しく、叱ってくる事があり女性にしては失礼だが、兄とか父の様な人。最初はその厳しさが怖くて怯えていたけど、その厳しさが責任感故の物だと気付くと信頼して背中を預けるようになった。


 タスケテ


 あの声は届いていた。


 タスケテ


 救いを求めていた。


「俺は……」

 俺は助けないといけなかったのに。

 俺は勇者だったのに。


 届かなかった。

 助ける手段が思いつかなかった。


「やっぱり、偽者だから……」

 本物の勇者じゃないから。


 ばちん

 

 頬を叩かれる。


「パイシャン」

「そんな事言わないで!!」

 涙が目に溜まっている。名の束縛に、支配から逃れた少女は、泣くのを堪えながら、

「勇者は、いつも諦めなかった!! あたしも巫女も女騎士も勇者の諦めない姿勢に何度も救われた!! そんな勇者だったから力を貸した。そんな勇者だったから好きになった!!」

 詰めかかる声

 その声の中の混ざっていた単語。

「好きって…」

 言われなくとも好きだけどと変な風に返してしまうのは冷静ではないからだろう。


「……」

 魔法少女の顔が赤く染まる。

「……勇者が好き。兄とか尊敬できる人とかじゃなくて、異性として、人間として好き。……大好き」

 下を向いて、冷静に――それでも不安げに――なろうと努め、必死に言葉を紡ぎ、

「お願い。あたしの好きになった勇者を『勇者』が否定しないで」

 魔法少女の言葉にどう返せばいいのか分からずに困っていると、

『――落ち着いたかぇ』

 さっきまで、男性の姿をしていた精霊王が一人の女性の姿に変貌する。

「…ええ」

『なら、良い。――あの者を抑えてくれるかのぅ』

 精霊王の告げる先には、山羊の魔人。

「怪我が酷いんだよ!! いみゃ動いたりゃ!!」

 死んじゃうよと案じる声。

 その言葉通り山羊の魔人は満身創痍だった。それでも動いて、キツネの魔人に止められている。

「危険なのは重々承知だ。でも、真緒様が!!」

 真緒様を助けないと――。


 焦り。

 焦燥感を抱いて今動いたら危険なのを知っていてもその動きは止められない。


「リムクライン!!」

「真緒様は非力なんだぞ!!」

 狐の魔人が山羊の魔人――リムクラインの名を呼んで冷静にしようとするが、それは逆効果だった。

「魔力は尽きた。身を守る術はない。それで真緒様の安全は」

「あちし達魔族は、想いが欲望が力に変貌する!! なら、この焦燥感も欲望に変貌させればいい」

 キツネの魔人が叫ぶ。


 欲望……?

「欲望が魔族って…」

『――事実です』

 声が降ってくる。

「えっ!?」

 魔法少女の杖が輝き、そこから道が開き、青と緑の混ざった一匹の龍が現れる。


 龍は一瞬で姿を変貌させて、龍の末っ子――人間の姿に変わる。

「――親爺殿の命令で、ここに来ました」

 末っ子と離れたのは数日前の気がするが、以前に比べて、

「大人びた……?」

 先日まで魔法少女より年下に見えたが、僅かに魔法少女より年上の様になり、背も伸びている。

水琴ヴァッサー……?」

 魔法少女が愛称を呼ぶと、

「…すみません。驚かせてしまいましたか」

『欲の形じゃな。魔族は自らの欲の為に力を得て強くなり変貌する。……一匹の狼が人の姿を取るようになった事や、敬愛する者が人の姿を取るようになったから同じ様に人の姿を取る事になった者とかな』

 精霊王が説明する。

『その者は、誰かに見てもらいたいから変貌したのじゃな』

「精霊王様…」

 面白そうに笑う精霊王。それに対して羞恥心でせっかくかっこよく現れたのにと落ち込む末っ子。


「ありゅじは、リムクラインが危険な目に合うのも嫌がりゅよ」

「………分かってる。分かってるけど」

 まだ魔族二人は争っている。

「……真緒様」

 切なげに呼ぶ声。心底真緒を――新庄を案じ、心配している。


「……」

 ふと、思う。


 魔物――魔族と人間の違い。

 どこが違うのだろう。

 大切な者を心配し、案じ、助けに行こうとしている。


 それが危険だと知りつつも行こうとしている姿も。

 危険だと判断するから必死に止めようとするのも。

 人も魔族も変わらない。


 なら――。


(救うのが勇者じゃないのか…)

 

 ばりん


 何かが壊れる音。

 その音が何で、どういう意味合いをしているか分からない。だけど――。


 身体が…心が軽くなったのを感じた。

魔法少女告白するが、返事はいつのなるのやら。とか

龍の末っ子は魔法少女に頼られたいから強くなったり――でも、まだ気が弱い。とか

リムは真緒を助けたい心は敬愛なのか何なのか。とか

色々あるけど、まあ二の次な勇者。

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