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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
三人目の魔王候補
184/290

影の薄い魔王候補は…

本編だとしばらく出られないので

  幕間  影の薄い魔王候補は…

 魔王城とはそう離れてないが、見つかりにくい森の一角にずっと耳を澄まして回りを警戒しているシヅキがそこに居た。

 その傍には、深い深い眠るには言っている子供。村人に付けられた傷は手当てをしてある。

 その子供の近くには同じように手当てをしてある天狼フェンリルが心配そうに子供を見ている。


 シヅキは、その子どもと天狼フェンリルを優しげに――それでいて心配そうに――見守っている。

 人に異端として殺され掛けた人の子供――。

「………」

 人と魔族のハーフであるシヅキにとってこの子供は他人事とは思えなかった。


「シヅキ?」

 その子供の為に食糧を取ってきたシトラが戻ってきて尋ねる。

「……まだ眠ってるわ」

 子供は目を覚まさない。

 あの日からずっと――。


 村の者に、近所の人に、実の親に殺されかかった事がショックだったのだろう。

 泣いて、泣いて、泣いて、泣き疲れて、眠ってしまった――。

「外傷はひどくないのに…」

 まったく起きない子供。当初は魔王城で保護してもらおうと思っていた。だけど、気を失うように眠っている子供を連れて行くのに抵抗があり動かないでいたが、その子供が目を覚まさない――。


「見えないだけで、脳とかに怪我があるのかもしれない……。でも…」

 動かしていいものだろうか。


  ぴくぴくとウサギの耳を動かす。

 僅かな心音、呼吸音。身体が動くのを見逃さない――この場合聞き逃さないの方が正しいが――様に意識を子供に――それと同時に外敵にも警戒している――向けているシヅキに。


「大丈夫だ。この子は生きてる」

 ぬくもりが伝わってくる。

 呼吸も穏やか。

 心音が安定している。


「この子は、生きていいのか迷ってるんだよ」

「迷っている……?」

 どういう事なのか数寝てくる眼差しが、二つ。

 シヅキと天狼フェンリル

「この子は、今まで自分の世界の大きな部分だった家族に拒まれたんだ」

 支柱だったモノが崩れかかっている。

「自分のした事が悪い事だったと認めてしまえば壊れなかった事。――実際に悪い事かは二の次だけど、それを認めなかったからの家族に捨てられた事実。この子は今自分が縋れるのはそこまでして助けた天狼フェンリルしか居ない」

 怖がって、逃げ込んでいる。

「……このまま起きなくなったりは?」

 それに関しては、分からない。

「……………選ぶのは、この子だ」

 だから、今できるのは、

「届くと信じて、祈るんだ。…君は一人じゃないと」

 それは、

「シヅキ。……この子のお母さんになる覚悟はある?」

 捨てられてしまった事実。認める事は辛いだろう。苦しいだろう。

「この子に母親だと認識されないだろうけど、この子を支える”母親”になる気はある?」

 無償の愛を捧げる存在。それはたぶん母親と言う言葉でしか表せないだろう。

「母親……」

 ぎゅっ

 女の子の手を握る。

 その手が何よりも雄弁だった。


 それを見て、もしかしたらと祈るように魔力を紡ぐ。

 恨まれるかもしれない。憎まれる可能性が高い。だけど、

「心が苦しむくらいなら…忘れてしまえ」

 と女の子に忘却の術を掛けた。


無自覚(?)で魔王の能力使用中

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