とある実験
試してみてください
第17話 とある実験
「えっと、魔王城は……」
勇者の手には棒。
かたん
「よしこっちだ」
「倒れた方に向かうって…」
なんて、原始的な。
それにしても、反対方向なのを言いたいが言ったらばれそうなので止めておく。三人が訂正してくれると―ー王女には期待していない――思うし。
「……」
道に進んでいく。どんどん森に近付いている。
(…誰も言わないのか)
誰かが言うと思ったのに、
「森が深くなったな」
ソウデスネ。
「殿下。馬車は通れないので、引き返した方がいいですよ」
そういう事じゃない。
がさがさ
「んっ?」
何の音。
「”たっ、助けて!!”」
悲鳴が届き、とっさにそちらに走り出す。
「新庄さん!!」
勇者が呼び止めようとしていたが、止まれなかった。
「”助け…”」
「”なんだ、お前? この地の民か?”」
大けがしている獣人――カピパラだ――と銃っぽい物を持っている人間。
いや、違うな。この者は、霧の向こうの民だった。確か、
「うわっ、エルフだ!! 本当に居たんだ!!」
大興奮な勇者の声がする。
ああ、うん。ファンタジーお約束の森の住民。エルフだ。
(でも、イメージだと弓矢なんだけど)
持ってるのは銃。
火は、嫌いな感じなのに。
「感激だな!! これぞファンタジーの醍醐味!!」
「”お前。なんだ?”」
エルフが、困惑しているな。
「”……外の民が何しにここに?”」
言語は変わってないな。霧の中では、すごく変わっていたのについ感動していると、
「勇者様。エルフとは?」
不思議そうに訪ねる声。
「あっ、エルフって知らないのか。え~と」
「”我らの言葉がわかるのか?”」
「”まあね。……何しにここに来た?”」
奴らがエルフ話をしているすきにそっと、獣人に逃げる様に合図を送る。
「”ま、狙いはこの地。だろうけど”」
それくらい分かると告げるが、
「エルフというのは、森の守護者で、いい人だ」
「「「なるほど」」」
どうして、そうなった。
「もしかして、魔物で困っている人を助けに来てくれたのかも」
もう一度言うが、どうしてそうなった?
「”貴公?”」
「”……は、元気そうね”」
相手にしか聞こえない声である存在の名を口にする。
「新庄さん?」
その時になって、勇者は、私がエルフと会話している事に気付く。
「”空白地帯だと思って手を出すつもり?”」
確認するが、間違っていないだろう。
「”……生きておられたか”」
「”……正確には違うだろうな”」
エルフはじっとこちらを見て、
「”貴公の事は、報告させてもらう”」
それだけ告げて去っていく。
「新庄さん? もしかして、エルフの言葉が…?」
さてと、ばれたら困るし、誤魔化そう。
「えっ、湯島君? 分からなかったの?」
と、分かっていると思っていたとばかりにとぼける。
「いや…分からなかったけど」
「あれかな、戦いが出来ない分。そっちの能力が強いのかな?」
笑って告げつつ、ある推測して、試したのだ。
魔族に知性がないと判断したから、言語が分からない。なら、同じ言語のエルフならどうなるか。
結果は、
(霧の中限定の言語しか翻訳チートはない?)
偏っているとしか言えない。
まあ、これでエルフには、通じていたら癪だけど。試してみる価値はあった。
次回別の魔王様出すつもりだけど出るかな




