そして、人は虚構を知る
謎解き編?
第161話 そして、人は虚構を知る
勇者の知らないところで、気が付くと龍帝と精霊王の助力が得られる流れになってきているが……。
「あの……」
何が一体どうなった?
『――ああ。勘違いするな。わらわはそなたに力を貸すのではない』
『その方が面白いから。だそうです』
精霊王と龍帝――正式には龍帝の息子――が告げるのを複雑な想いで聞いている。
「まだ、巫女と女騎士の意見を……」
聞いてないんですが………。
と、答えようとしたら、
「勇者。何かあった?」
「非常事態なら起こしてくだされば……」
女騎士と巫女が目を覚ます。
そう言えば、今は夜だった。
「………夜中に歩いてきたんですか?」
王女に向かって尋ねる。
「精霊王様の巫女になってから身体能力が向上したんです……」
加護の一環か振り回された結果かは不明。
「勇者。これはどういう事ですか!?」
巫女がすかさず文句を言ってくるが、ふと何かに気付いて視線がある方向で止まる。
――まだ、映像は動いていた。
「………………何で」
信じられないと呟く声。
「巫女……?」
「どうして……」
こちらの声が聞こえてない様だ。
映像は聖人の行いを映している。
ほとんどさっきと同じ光景――あえて、凶事を起こさせて被害を作りそれを救う――の繰り返しなので見る必要が無いと思っていたのでまだそのままだったのを忘れていた。
巫女は凝視する。
偽りを見付けようと必死になって瞬きもせずにその映像を見続ける。
「そんな……」
その喉から零れたのは絶望。
「そんな事って……!?」
ショックのあまりへなへなと地面に座り込んでいる。
「巫女?」
「……この方は」
涙を流し、今まで信じていたモノが崩壊しているのだろう。聞いても居ないのに縋る様に、
「この片の顔は、神殿の関係者。……教祖様にそっくりです」
教祖?
「それなら会った事が…?」
「教祖様は、神殿の奥深くにおられて常にユスティ様に祈りを捧げているので表に出られません。関係者以外には神殿の最高責任者は司祭様と伝えてあります」
巫女ががしっと勇者の腕を掴む。
「聖人様の話は何度も聞いてます!! ユスティ様を信じ進めば聖人様の様になれると!! だけど、だけど!!」
自作自演の聖人。救ってなど無く、災厄を起こしていた虚構。
「わたくしは…」
慟哭。
「わたくしは今まで何を信じていたんですかっ!?」
嘘だと、言い募ればましかもしれない。でも、巫女の目にはこれが本物だとしっかり分かってしまった。
そして、
「同じ顔がこうも続くものですか…?」
子孫でも似ているだけで類似してると言えるほど似てはいない。妻帯は認められているので――だから勇者に迫っていられる――子孫と言えたが、ここまで似るなんてありえないだろう。
「……クローンとかじゃない限り」
元の世界では研究段階だけど、この世界ではどうなんだろう。よく、ファンタジーお約束のホルンクロスみたいなものとか。
『……』
答えを知っていそうな精霊王。知らなくても予測を立てられる立場の龍帝の子は沈黙をしている。
待っていたのだ。こちらの選択を。
真実を知ってどう動くのかを――。
立派な宗教だと信じていたのにインチキだった。




