信じる価値
魔法少女は動かしやすい
第156話 信じる価値
「つまり……魔王。もしくは、勇者と言う存在じゃないと神にはなれなくて」
その神になるには切っ掛けが弱すぎる。
『そうらしいです。それなのに歴史を塗り替えて、言語も変えさせている。それが奇妙で』
末っ子の言葉。
『親爺様曰く、獣の王はそこらへん無頓着だったからその変化も気にしてなかったんだろうけど、いくらなんでもおかしすぎるから調べろと言う話です』
外から見ると妙な歴史。だけど、元から中に居た少女とこの世界に召喚された時にこう言う物だと知らされた勇者はその奇妙さは正直分からなかった。
『…………逆鱗を』
「えっ!?」
『僕の逆鱗を通して、僕から見たその地域の歴史を映像として送り出すよ』
末っ子の判断に、
「………」
しばらく黙って、
「………それが、偽者じゃないって保証は?」
『………僕の逆鱗に誓うって、逆鱗の意味は分からないか』
龍にとって逆鱗で誓うのはこの世界の住民にとっての名と同格だが、龍と言う存在すら知らされてなかった人間には分からないだろう。そうやや諦めに近い言葉。
だが、彼の逆鱗を渡した相手は魔力の世界にどっぷり浸かっている存在。
「じゃあ、信じる」
逆鱗と言うのがどう言う物か詳しく知らなくてもそれの希少価値は分かっている。そして、それに誓うって言葉はそれだけ重い事も理解した。
軽い言動と、勇者の仲間の中で一番の若さを持っているから軽視されがちだが、魔力と言うこの地域で異端な物に手を染めて、勇者達の足手纏いになっていない実績。
つまり、人は見た目に寄らないと言う言葉はまさに彼女の為にあった。
彼女はそっと黙ったままの勇者に視線をやり、勇者にどうするか尋ねる。
こくり
勇者は頷く、
「見せて」
お願いをする。
『………分かりました』
杖が淡い光を放つ。逆鱗を通して魔力が流れる。
そして――。
魔法少女と、その近くに居た勇者の目の前には知らない光景が広がっていた。
次から章を変えます。




