龍から見る奇妙さ
愛妻家で親ばか
第155話 龍から見る奇妙さ
龍帝は、末の息子が逆鱗を通して魔法少女と話しているのを聞いていた。
「おかしいものだ」
人の寿命は短い。
魔王になる前から龍であった彼にとって、それは昔から思っていた事であった。
寿命が短いからか変化も激しく、文明も変化する。それでも、その地域は…いや、その地域だけ言語が異なっていた。
旧文明とその地域の者が呼んでいる言葉は、龍帝の治める地域でも冥王の治める地域。精霊王が納める地域。隣接している三王の地域ではいまだに使用されているモノであり、他の地域の魔王でもその言語は一般的なものだ。
結界の影響で、独自の文化が生まれたにしては、他の地域の変化の無さが気になる所だ。
そして、結界の崩壊――。
結界の成り立ちを考えるに結界の事は必ず伝えなければいけない懸念事項なのに、書物や口伝。おとぎ話でも伝わっていない。
…………まるで、何者かが伝わらない様に細工をしたとしか………………。
「あの地の女神じゃ無さそうじゃな」
「親爺様?」
尋ねてくる次男――ちなみに家族全員集まっている――に、
「女神は女神を辞めたがっているみたいだしな。この混乱を何ともしないとこを見ると」
代わりに動いているのは結界を作った立役者――生贄の勇者だ。
「元々、かの女神の由来を調べてみると女神と呼ばれるには弱い存在だ」
英雄――勇者であったり、聖人であったり、神に――高位の者になるにはそれなりの箔が必要だ。
「結界が破れたところで食い殺された小娘一人。小さな犠牲の一つだ。まあ、彼の地では、その被害は最小限に留まっていたのにな。そして、聖人と――聖女として呼ばれているのに生前の事は言い伝わっていない」
偉大さを伝えるのに伝記と言う手段を使う。かなり拡張されてはいるが概ね内容はズレてない。
「それに対して、獣の王の功績が正確に伝わっていない」
残虐な魔王。悪の中の悪。そう伝えられて、まるで、
「故意に獣の王の評判を落としているようだな」
獣の王が行った人からすれば善行が居もしない架空の聖人の功績になって、とある国の国主が行った悪逆非道な内容がすべて獣の王本人――または、獣の王に操られてという事になっている。
「そうやって、塗り替えて、気が付くと女神と言う存在は最近現れただけのはずが、生贄の勇者より古い神に変貌していった」
奇妙だ。
何でここまで、洗脳に近い形で広まった?
「妻が生きていれば、知恵を貸してもらえたかもしれんが…」
魔族とは言え、動物系からの魔族だ。寿命が違った。連れ合いとして選んだのに悔いはないが、寄り添ってない事が悲しく感じる。
「おちおち悲しんでも居られるな」
妻の事で借りがある。
「少し借りを返すか」
そう呟くと、
「すまんが、精霊王と冥王に会いに行ってくれ」
子供達に命じた。
同じ様な事を勇者と魔法少女は聞かされてます




