集う弱者
お帰り真緒様
第151話 集う弱者
魔王の城。
その玉座。
「真緒様」
「うん」
魔王城の正門に多くの魔獣が詰めかけてる。それが、玉座から見えるモニターにはっきり映し出されている。
「アカネ」
膝に乗せて、もふもふを堪能させてくれた――玉座の拒否反応は直接座った者だけに起こるのでアカネは無事である――膝からジャンプして降りるがその際くるりと一回転をして魔人姿に変化する。
「ありゅじ。何?」
「門開けてきて」
案内もしてあげてね。
「は~い」
命じるとすぐ動き出す。
「リム」
「――食料と水。必要な物は城の中にありました」
言いたい事はすぐに理解しての返事。
「怪我しているのは?」
「………ある程度なら、私かアカネが”認識して名を呼ぶ事”で自己回復能力を向上させれますが……」
いわゆるドーピングだ。
「回復させられる魔族が居ないか……」
そう言えば、龍帝に嫁いだ同朋は回復に特化した魔人だったな。
「……シャンティアの種族はどうなってるか分かる?」
尋ねると、
「すみません。その方を知らないのですが……」
「ああ。シャンティア自体は亡くなってるしね。………回復特化の魔人の種族で、病や怪我を治せる力を与えたんだけど…」
と、説明をしていたら、
「真緒様?」
「――今のは聞かなかった事にして」
リムクラインに確認を取る前に、玉座が答えを出してしまう。
「………………ますます人間を嫌いになりそう」
私は人間なのに。
モニターに映されているのは乱獲されていく、魔人の姿。
シャンティアの種族は回復に特化――つまり攻撃に不向きだった。基本的に平和主義で、人間に成りすまして医者や薬師として生活をしていたけど、魔族と――人間からすれば魔物か――だと知ったとたん抵抗出来ない様に捕らえて、火焙りにした。
………安くて、効き目のいい薬を出す彼らから製法を聞き出して儲けたい。そんな輩が先導して動いたのだ。
その後、製法を書かれた紙を見付けたが、どんなに作っても効き目は魔人達が作っていた時より劣るそれが、彼らの売っていた値段の10倍の価格で売られ、弱い者達は薬が手に入らず亡くなっていった。
弱い種はそうやって消えていく。
「………人間にも一方的に狩られる立場じゃないように魔族の身体とかは素材にしておいたけど、しちゃいけなかったかな」
こういうのを見ると。
「……真緒様」
リムクラインが名を呼び、そっと私の手に自分の手を重ねる。
「リム?」
「……我々魔族は、貴方様に望まれて生まれました。誰も恨んでません」
気に病まないでください。
「妄信的だね……」
茶化すが、
「皆貴方に愛されたから種として続いていられる事を知ってます。そんな貴方を貴方自身が責められるとこちらとしては立つ瀬が無いので」
もし、責めるとしたら、
「貴方がお困りの時にお役に立てない事を責めるでしょう」
そう諭すように――愛情に答えたいと告げてくる。
「うっ……!?」
綺麗な――私好み――顔で近くまで迫ってくると、
(これは、魔族の本能。これは魔族の本能。これは魔族の本能……)
いろんな意味でぐらぐら来るので、慌てて言い聞かせる。
魔族が魔王を慕うのは本能だし。
魔王の言葉は絶対に逆らう事も無いのも本能。刷り込み。
だから、だから、
(自分好みのイケメンに迫られても親を慕う子供の様なものだから!!)
つい、きゅんとなりそうな自分に居た堪れなく感じる。そう、まるで無垢な子供にあらん知識を教えて若紫を育てているような……。
ある意味憧れだよね。自分好みに育てるのも――。
と、けが人の事を話していたはずなのにそれを忘れて、やや現実逃避をしてしまった。
リムは本能とか親を慕う感情だけで迫ってません




