舌戦
ラスボス(?)の登場(?)
と言いつつも小物臭がする
第150話 舌戦
その笑顔は険しかった。
慈悲深い女神。
世界唯一の神。
……………自分をこの世界に召喚した女神。
その女神がここまで負の感情を顕わにするのが信じられない。と勇者は思っているが、勇者が鈍いだけで負の感情は卒中出している。
――勇者を唆す魔の影
くいっ
女神はそいつを指さす。
「おいおい。唆しているのはあんただろう? あんたの望みは叶いつつあるんだ。何梃子押ししに来たんだ?」
呆れた口調だが、目は笑ってない。
きっかけがあればいつでも戦闘に入れる。そんな雰囲気を纏っている。
それに対して女神は嘲笑う。
――野蛮ですね。戦う気満々で
挑発。
「――何の事かな?」
ふふふっ
はははっ
バチバチと火花が散る中。笑い合う二人。
そん奇妙な光景に――何といっても片方は自分とそっくりなのだから――オロオロしてしまうのは仕方ないだろう。
一体どういう状況なんだ!!
誰かに答えを求めたくても、今近くに居る二人(?)は真逆な事を言いそうで――流石にそれは空気が読めた――怖くて聞けない。
それにしても………。
召喚された勇者と召喚した女神。
その両者が友好的ではなく、こうやって睨み合っているなんて変な感じだ――勇者は自分で睨み合っている片方はただのそっくりなだけなんだろうけど――。
――勇者。騙されてはいけません
女神が告げる。
――この者は貴方を魔物にしようと唆す存在です
倒さなくてはいけません。
「その手の事を最近よく聞くな。慈悲深き女神が言い分を聞かずに一方的に相手を断罪する。それってどうかね」
肩をすくめ、
「――そうやって、龍も新庄さんも遠ざけるのか。次はどうするんだ。魔法少女か? 女騎士か? 魔物は知性が無いと言ってきたのに勇者が疑問を抱いたとたん言葉を理解して、最近じゃ普通に言葉を話す魔人も現れた。元人間であって、彼は人間の裏切り者だと言い切るのか? 魔物にされてしまったのなら真っ先に救う対象だろう?」
すらすらと言葉を紡ぐそいつに、
(えっ、マジ!! 慈悲深いと言うのなら救わないといけないの? ……そうか。そういや、知性が無いのに言葉が分かるようになったし、あの魔人二人は普通の話している)
「魔物と共存している町でも実は魔物に人間が操らrているのなら神託なりなんなりで伝えて助けないといけなかったのではないのか。それなのに、その時は現れずに今になっては降臨の大盤振る舞いだ。不自然にもほどがある」
何この冷静に判断する自分――のそっくりさん――につい感動してしまうと、
――何でそんなに賢いのっ!? 勇者の分身のくせに!!
んっ?
「――だからだよ。俺は湯島正樹の分身の一つ。一人で悩むしかない者と対等に語り、迷いを取り除くモノ。……どこかの女神のように一方的な答えを出さない」
それよりも。
そいつは笑う。
「勇者の分身。そうはっきり言ったな。俺は魔物の罠じゃなかったのか?」
女神はさっと顔色を変え、消える。
「詰めが甘いな」
「今のは…」
「次回会う時は聞いてみな『それは、貴方の真名で誓える事かと』………面白い結果が出るぞ」
満足そうに笑い。
「もうここに来るな。――迷うなら意見を聞け」
ここに来たら魔王に近付くだけだ。
忠告。
「………出来れば来たくない」
そう返すとそいつは満足げに笑った。
Q.何で女神がここに来れたんですか?
A.まだ完全な魔王じゃない+勇者が女神を無意識に頼っているから入れる。
分身「俺が魔王化防ごうとしているから邪魔だったんだろうな」




