宝物
幕間久しぶり……
幕間 宝物
彼は宝箱を見つめている。
「綺麗ですね……」
ずっと、欲しかった。
自分のモノに居たかった。
月を集めたような白銀の髪は腰まで伸びていて。細く、揺れるたびに光を宿す。
肌は雪のように白い。きめ細かい。
瞳は閉じられているが、何よりも尊い紫。
そして、何より、髪と同じ色を宿す狼の耳と尾。
さらっ
その絹糸の様な髪を一房掬い。
「愛してます」
と告げるが、答えてくれる声は無い。
「――つれないですね」
魂の宿ってない身体。
本来なら肉体は崩れ、消滅していた亡骸。
答えないのも当然である。
「ようやく、貴方の魂を見付けましたよ」
この地の全ての存在に見せ付けた姿。性別こそ違えぞ。この姿であった。………その姿が目晦ましであれ、今の姿であれ、魂の輝きは自分を引き付けたモノそのままだった。
その時の喜びをどう表現すればいいのか。
勇者に倒されて、肉体は回収したが、まさか魂を逃がすなんて失敗をするとは思ってなかった。自分の甘さが招いた結果だ。
欲しいのは魂を含んだ彼の者。
絶望に沈みかけていたが、
「貴方はお優しい方ですね」
私の為の戻ってきてくださるなんて。
「安心してください」
髪に口付けをして、
「今度こそ逃がしません」
誓う声。
「せっかく、貴方を私だけのモノにする機会です。手に入れてみますよ」
長かった。
一目見た時から魅せられた。
魂を奪われた。
だけど、自分では遠すぎて近付く事すら出来なかった。
だから、策を巡らせた。
自分だけのモノにするために。
「ユスティ様。勇者。私の願いの為に踊ってください」
そして、
「高位の方々。舞台を面白くさせてあげますので手出しは控えて下さいね」
じっと、自分を見ている存在に気付いていた。時折、囁く声も届いていた。
楽しませるならいいわよ。
声が告げた。
「――ええ。十分楽しませますよ」
そう幻聴のように聞こえた声に返答をして、
「また来ます。――今度は魂を入れてあげますね」
と、宝物――獣の王ラーセルシェードの亡骸に告げた。
真緒 ゾクッ
リム「真緒様?」
真緒「いや、なんか寒気が…:;(∩´﹏`∩);:」




