素朴な疑問
最初の突っ込みを忘れないうちに続き
第146話 素朴な疑問
「亡骸って…、生きてるもんだっけ?」
亡くなった人の躯だから亡骸。漢字って分かりやすいな。
「――ハゼットの眷属になったつもりはないけど」
「僕も君を眷属に出来るとは思えないよ」
最初の発言がそれなんだねとため息を吐かれた。何故だ?
「そう言う問題じゃないと言えばいいのかな」
困ったように――本当に困っているのか不明だが――、
「君が用意した結界の仕組み。その1。玉座に魔王。または勇者が居る。その2。魔王の亡骸を結界の一部として埋め込めばいい。その3。何百年に一人生贄を差し出して、魔王の退屈を紛らわせる。……………もし、結界が不要と判断した場合。魔王、または勇者は玉座から降りる。または、魔王を退治する。結界を維持せずに、外の世界と交流、または、対等に渡り合える方法を見付けたら結界を維持しない。脳筋の君にしたらよく出来た仕組みだよ。――それを人間達が忘れなければね」
脳筋……。
「自覚はしてるけどはっきり言うね」
うん。前世の自分脳筋だったわ。
何時の間の華世界の流れが変化している事に一切気付いてなかったからな。
「………………ところで」
「うん?」
「それを教える為だけに来たの?」
それだったら暇人だな。
「この地域の侵略を辞めると宣言してくれたんじゃないの?」
ついそんな事を聞いてしまうと、
「――するわけないじゃない」
と返される。
「だよね」
そう返って来ると思っていた。
「君が僕らと同格のままだったら考えたけど、今の君は人間と変わらない。…次の魔王がどう判断するか分からない。――君からすれば不快だろうけど、僕は、偽りを口にしたくないから口先だけの事は言えないね」
言葉を巧みに操るだけの事はある。
そういや、自分の治める地域で名乗って名前の力を実験したのこいつだったな。
「侵略する理由は?」
「……人は愚かだから」
かつて人間だったのに妙な言い方だな。
「人は弱いから。圧倒的な力を持つ何かが無いと一つに纏まらない。――金持ちなら買える薬も貧乏なだけで手を伸ばせずに病で倒れる。だけど、圧倒的な力を持つ何かが動けば救える者もある」
…………恐怖で支配してはいるが、こいつは、全てに対して平等だ。
少なくとも貧富の差で出来る出来ないを作ろうとしない。
「高位の者からすれば必要悪と言うかもしれないけどね」
ああ、話がずれたね。
「僕は侵略を辞めない。少なくともこの地を放っておくと無法地帯になるのは目に見えている。僕を止めたいなら、僕と対等に話を付けれる次の王か僕を倒す勇者を用意しなよ」
そう告げて、去ろうとする。
「少なくともこの地をこのままにしたら高位の者の玩具になるだけだよ」
ああ。そうそう。君の亡骸。悪用されないうちに回収しておきなよ。
消える気配。
「……そう上手くいかないか」
この地が高位の者の玩具になる……。
「ユスティだけじゃないのか」
はあ。面倒だ。
ついついため息が漏れてしまった。
そういや、他の高位の者達出してないな




