それを見ていた者 人間
人間sideはいろいろ大変
第140話 それを見ていた者 人間
「勇者は何をやっている!!」
どんっ
拳を机に叩き付けて、男が叫ぶ。
その男の傍にはそれを冷めた目で見ている者がいる。
円卓。
かつて、対魔王の民に各国の首脳陣が集い、意見を交わした場所に魔王と言う脅威がなくなって集う事は無いと思われていたのに……そこに再び集っている。
「せっかく魔王を倒したのに新たな魔王だと!? 我々の脅威が無くならないではないかっ!?」
……そこで冷静な者が一人でも居れば告げただろう。
彼の者は魔王と名乗っていないと――。
「だから、勇者として煽てている内に真名を名乗らせてこちらの意思に従う様に調教しておけばよかったんだ!!」
ある一国が怒り任せに叫ぶ。魔王城付近の国の一つであるそこでは今は沈静化しているが――沈静化の理由はとある存在にあるが――次期魔王争いで魔物――本当は魔族――が暴れていて、兵を向けても間に合わない事態だった。………それでも民の被害は少なかったのだが、襲われたのは国の中枢に近い金持ちが多かったのでかなりの騒ぎだったのだ。
――ー応魔族側の言い分を言うと金持ちの所ほど、魔族から奪った資産が多くの魔王の遺品とも呼べるそれを取り戻す事で自分の方が次の王に相応しいと争っていたのだ。
民に被害が少なかったのは、たまたまだが。
「所詮。異界の者だ。やり方が甘かったんだろう」
勇者を召喚する事に否定的だった国の代表が意見を言う。
かの国は、勇者が魔王を倒した後に貰える分け前が少なかったから余計に文句を言いたかったのだ。
「負け犬の遠吠えが」
それを鼻で嗤うのは勇者を召喚するのに賛同した国の代表。見事に勝ち馬に乗って儲けられていた。
・・
……そう、儲けられていた。過去形だ。
霧の付近の国だったので、魔王の財宝で儲けられていたのは最初の内だけで、すぐに植物は育たない。侵略者に襲われるなどの被害にあっていたのだ。
全部、死んだ魔王の呪いだと判断しているが。
「だが、勇者が手緩いのも事実だ。さっさと侵略者の前に出せばよかったモノをちまちま魔物退治だけしておって」
せっかくの道具を無駄な使い方をしてと文句を言うのは侵略者の被害が酷い国家の代表。彼にとっては勇者は勇者と言う名の道具であって人間ではない。
使える道具は適材適所で使用しろと文句を言ってくる。
そんな中。
意見を言えるほど大きな国ではない。弱小国が何かを言おうとして周りの勢いに押されていえずに同じ立場の国々と視線で会話をしている。
彼らには、大国に言えない。言っても信じてもらえない事実があった。
そう、――侵略者達に民が襲われてはいるが被害が少なく。その理由は魔物達が人間を庇っている。そんな事例が上がっている事を――。
ギャグはまだまだだった




