それを見ていた者 龍帝と子供
精霊王と同時刻です
第139話 それを見ていた者 龍帝と子供
がははっ
それを見て、龍帝は笑う。
「親爺様? あれは?」
「――お前達にはどう見えた?」
4人の子供に尋ねると、年功序列だろう。最初に口を開いたのは長男。
「……お面を被っている人間に見えました」
ですが、と続けようとした長男を手で遮り、
「次」
と告げる。
「俺も兄と同じです。人間が分相応に魔王に振りをしている。と」
「……」
次男の言葉に頷く長男。それを聞いた長女が迷うように、
「私は、白銀の魔人の女性に見えました」
「僕もです。…狼の魔人に」
下二人の言葉に龍帝は面白そうに笑う。
いや、面白がっているのだ。
「そうか。そうか」
力いっぱい子供達の頭を撫で、
「じゃあ、彼の者をどう思った?」
「……」
誰一人口を開かない。
彼の者の事は映像だけでは何とも言えないのだ。
「そうかそうか。まだまだだなお前ら」
龍帝には二重映しに見えていた。
黒い髪を持つお面を被って正体を隠している人間の少女。
白銀の髪と耳を持つ狼の魔人の女性。
そして、その正体を――。
「魔王と呼ばれる者は必ず倒されてお終いだが、まさか、魔力が尽きる形で魔王を辞する者がいるなんてな」
魔王――龍帝として君臨していたがその手の事は今まで聞いた事無かった。
「……冥王あたりなら知ってるかもしれんがな」
あいつの知識は莫大だからな。
「親爺様?」
一人で考え事をしていたら子供達がじっとこちらを見ているのに気付く、
「かの者の正体はお前らの会った獣の王の魂だ」
映像越しでも見抜けと告げると、
「えっ!? ですが、魔力が…!?」
長女の疑問に、
「魔力でしか、判断しないのはお前の悪い癖だぞ。《爪》」
直接会ってはいない。だが、魔力が無くとも、映像越しでも魂の本質に変化はない。
自分の治めていた地域の被害を最小限に収めたい。出来れば、被害すら無い事にしたい、そんな想いがありありと伝わってくる。
「慈悲深い所は変わってないな……」
ほんと面白い。
「逆鱗を渡せないが、愛人にしたいな」
「………………親爺様」
子供達の冷たい反応。
「冗談だ」
そう答えるとホントかなと疑う視線が当たってくる。
「それはそうと……《水琴》」
逆鱗を渡した事は賢明だったかもしれないな。
「親爺様…?」
「人がどう選択するか分からないが、彼の者は高位の者…神に喧嘩を売った。その件に直接ではないが干渉できる立場になった。そういう事だ」
正直羨ましいと告げて、
「様子を見守れ」
と末っ子に命じた。
末っ子はまだ真緒が獣の王と言う事実を知りません




