金色の刃
うん。当初の予定に近付いた。
第137話 金色の刃
玉座に座るとかつてと同じこの玉座に座る者が納めている地域の様子が大量のモニター画面のように見え始める。
侵略者(人間)に襲われる人々。
侵略者(アンデット系)に襲われる人々。
魔族〈動物系〉を捕らえようとしている人々。
魔族〈動物系〉が人間を襲っている者。
多種多様である。
「さてと」
玉座の抵抗を封じて座ってしまえばこちらの物である。
魔族の王であったが攻撃力が一切なかったかつての自分の強い味方。それが、座る事で攻撃力が付くこの玉座。
玉座に座って、玉座の力を使う。
金色の刃。
そう呼ぶとかっこいいのか中二病的だなと突っ込みを受けそうだが、様は雷である。
狙いを済ませた雷は、次々と侵略者を焼き払い。
この地の魔族。または人間を裁くように襲う者と襲われる者の間に落ちて、牽制する。
断罪の刃。
正義の力。
人々は雷をそう判断する。
そして、誰かが、
「かっ」
「老若男女。紳士淑女のみなさん」
世界――正式にはモニターに映っている範囲のみだが――に響くように作動させた声を送る。
「私の手柄をどこぞの神に採られては困りますので、名乗りを上げてみました」
ああ。歯が浮く。
取り敢えず、何となく偉そうに、中二病ぽく言えばいいんだよね。
……………ああ。恥ずかしい。
赤面しているのと正体がばれないようにお面を付けて、狼の耳の飾りを付けて――プラスアカネの幻術で全く別の姿を投影している――姿をこの地方至る所――鏡。まず。窓ガラス。などなど映すイメージがあるモノ至る所に――そう魔族が手を出せないと信じられている神殿とかも例外なく――その姿を晒す。
「魔王が居ない世界を甘受しているでしょうか?」
嫌味である。
魔王が居なくなった後の混乱ぶりを見ると、魔王の居た方が平和だったんじゃないかと口にこそ出さないが、思っている者が大半だろう。
図星を挿されて表情を変える者をモニター越しで眺め、
「――大変申し訳ありません。魔王と言う存在の居ないささやかな平和を壊しに来ました」
相変わらずの皮肉。
平和なんてなかった。そんな胸の内が聞こえそうなのをバレない様に笑い。
「我が名はラーセルシェード。その名の意味を理解する者達よ。人を襲う事を止めよ」
その声に反応して魔族から上がる歓喜の声。
「――我らの望みは人を襲う事ではない。もし、襲う者が居ればそれは我が同朋ではない。もし襲う者が居れば煮るなり焼くなり好きにすればいい」
ここで言葉を区切る。
モニター越しでの反応を見て、感極まって泣き出す魔族とかその場で平伏する魔族に私の存在はまだまだ現役だな――魔力なくとも――と感心して、
「――我のこの声の意味を知る者よ。この意味を捕らえ、判断するといい。そして、人の子よ意味を知りた
・・・・
ければそなたらの望む代表と共に来るといい」
丁度いい代表はいるでしょう。それに人を守るという意味では動きやすいでしょう。
ねえ、勇者?
ねえ、ユスティ?
こちらからは攻めないと宣言した。
名を使っての誓いは絶対なのはこの世界では常識でしょう。
魔族を悪になどさせない。
そして――。
「魔王が死した後を憂いた者よ。かつての魔王の亡骸を供養したい。差し出してくれる事を祈る。――さもなくば」
これ以上言わないが脅しには向いているだろう。
そして、幻影も限界なので、消し去る。
「これでいい」
魔王の亡骸を使用すれば結界は修復できる。
「魔王とは名乗ってないけど、魔王が復活したと混乱するだろうね」
内輪もめも収まるだろう。それに、牽制になる。
ユスティは何を望んでいるのか分からないが彼女を崇める者は減る。
力を削ぎ落としてやる。
そのための名乗りだった。
次にギャグを入れるつもりだけど、ギャグをスルーしてくれるんだよね……




